Special Message 〜作家としての喜多川泰〜
 
新聞や雑誌のインタビューでよく聞かれることの一つに、「喜多川さんは作品を書くときに気をつけていることはありますか?」という質問がある。僕はいつもこう答える。

「初めて本を読む人に『本って、いい…』と思ってもらうために本を書いています」

いろんな場面で「昔からさぞかし本が好きだったんでしょう?」と聞かれることが多いが、実は全くの反対。子供の頃から外で遊ぶことしか考えていなくて、おぼえている限りで小中高と読み切った本はなかったような気がする。夏休みの読書感想文は5年連続同じ本で書いた(笑)。大学時代はさすがに気になる本を数冊読むことはしたが、それでも本を読む人ですかと聞かれたら「いいえ」と答えただろう。その程度の読書量しかなかった。

僕が読書の素晴らしさに気づいたのは28歳と結構遅い。それまでは、本を読むことによって自分の人生がどう変わるかなんて考えもしなかった。むしろ「本なんて読んだって仕方がない」と本気で思っていたのだから恐ろしい(笑)。きっかけは、起業だ。

1998年、僕は会社を作った。起業する人は「自分はうまく会社を経営することができる」という絶対の自信がある人だ。そうでなければ起業なんてできない。当時の僕も相当自信があった。ところが、実際に動き出した会社は、何一つ自分の思い通りに行くことがなく、船出と共に危機に直面した。やることなすことうまくいかず、自分ではどうしていいのかわからない状態になって始めて僕は素直になることができた。

「本を読んでみよう」

そして出会う本すべてから、勇気と知恵を得て自分の経営に活かしていった。もちろんすぐに経営が良くなったわけではなかったが、自分が新しい自分に生まれ変わっていくのが感じられた。僕は本を読むことによって生まれ変わったと言っていいほどの変化が自分の中で起こるのを感じた。人間が変われば、すべてが変わっていく。会社の存在理由や、仕事に対する考え方。一緒に働く仲間や、僕の塾に通ってくれた生徒と保護者に対する思いも、出会った人に対する感謝…すべてが変わっていった。そうして、僕の会社は徐々に多くの人たちに愛される会社に変わっていった。

そのときに出会った数々の本にはほんとうに感謝している。もし、最初に出会った本がつまらない本だったら、「やっぱり本を読んでもしょうがない」と本を読むのをやめてしまったかもしれない。僕にはそのときの思いが強く心に残っている。

僕が作家として活動をはじめたのは2004年。最初に書いた作品は、自分の周りにいる人だけに読んでもらうつもりで書いてみた。完成した作品を読んだ僕の周囲の人たちは全員が絶賛した。(その作品は「上京物語」としてディスカヴァー社から出版されている)もちろんお世辞も半分あっただろうが、もしかしたら…という思いが僕の中に生まれた。「自分が書いたものがもしかしたら世の中の人を幸せにするかもしれない」という思いと「別に自分じゃなくてもいいんじゃないか」という思いが半々だった。それでも、もし僕の書くものが世の中の役に立つものなら、その作品が世の中の人の目の前に並ぶための努力を怠るのはダメな気がした。自分ではその判断がつかなかったので、出版社さんにゆだねようと思った。結果はご存じの通りである。僕は今、作家としてたくさんの作品を出させていただいている。

きっと僕は昔の僕に向かって本を書いているのだろう。「本なんて読んだって…」と素直になれずにいる僕に「こんな本を読んだら、人生変わるかもよ…」と言いながら手渡せるような本を…

実際に講演会などで出会う多くの方から「喜多川さんの作品がきっかけで本を読むようになりました」と声をかけてもらうことが多いのは、僕にとってほんとうに光栄なことだ。これからも僕は初めて本を読む人にとっての「本の世界への入り口」として喜多川作品を書き続けていこうと思う。

一冊の本との出会いで人生は変わる。そんな出会いを喜多川泰の作品で経験してくれる人が増えてくれれば僕は嬉しい。


喜多川 泰




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