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Interview 09 後藤めぐみさん

2018/04/29

 

 

ベストルートから外れないことが大事ということですか?

 

外れないことというよりも、外れても行きたい方向を見続けることですかね。最初に考えていたルートから外れて岩やホールの方に向かってしまったとしても、パドリングさえしっかりできれば大丈夫だったりしますから、躊躇なくしっかり漕ぐことも大事。しっかり漕げると、ダメなルートでも意外と行けちゃったりしますからね。

ですから、ちょっと予定したルートから外れても、岩やホールに目をやらずに、通るべきルートを見続ける。状況は刻々と変わるけど、常にどこを見るか。

それから、視界の広さと、その辺がすごいやっぱり大事だと思いますね。川下りに慣れてきた中上級者には、そのことを伝えるようにしていますね。
見ている場所が近い人って、自分のイメージ通りにボートが動かない時に、すごい慌てるんですよね。広く見えていると、多少ルートから外れても帳尻合わせが楽じゃないですか。全体を俯瞰して考えられるので、自分が今ここにいるっていうのがイメージしやすいんです。瀬を下るにしても…岩の立て込んだところに行くにしても。
なので、最近はもう本当に、いかに視界を広くするかっていうことばかりを気にしてレッスンしていますね。

 

そうなんですね。ちょっと話を変えますね。僕がもともとカヤックを始めたのは、株式会社S・Yワークスの佐藤芳直さん主催の「人材創造クリニック in 四万十」というセミナーに講師として呼ばれるようになったのがきっかけでして、三日間のセミナーのうち、2日目、3日目はカヌーをやるんです。
参加される方は経営者の方も多いんですけれども、カヌー研修をやる理由の一つに、川下りは、川の流れが速くなれば恐くなる。でも流れが速ければ速いほど、自分がそれよりも速く前に進まないと沈するんですよね。だから、流れが速くて複雑なところほど、恐いところほど必死で漕ぐ。それはまさに経営も同じ。だから、そういったことを、自然から学んで、経営に生かす!そのことを身をもって体験するために、カヌー研修をする…というのがあるんですね。
僕が参加するようになってもう9年が経ちますが、そこに参加するまで、僕自身、日々の生活の中で、自然から学ぶことって、そう言えばほとんどなかったなって思ったんですよね。人や本からはたくさん学ぼうとしているけど、自然からは全く。
実際に、ここ(奥多摩)でカヤックをするようになって、本当に自然に学ぶことがたくさんあって、本当にその大切さに気付いたんですが、後藤さんが、カヤックを通じて自然から学んだことの中で大きなものは何ですか。

 

自然の力の大きさ、自分の小ささ…ですかね。(笑)

ただ、自然に圧倒されるだけじゃなくて、その力をよく観察してうまく使えると自分の行きたいところへ行けるっていうのも、自然というものを知ったからなんですよね。だから筋肉モリモリの男性よりも、ちゃんと流れを利用できる女性のほうが、流れの中でうまくカヤックを操れたりするんです。その辺もカヤックの魅力ですからね。

 

そうですね。自然から、と言いますか川から教わることがたくさんありますよね。そして、それは他では学べない。

 

そうですね、やっぱり習いに来ている人たちは、平日、オフィスの中で消耗してって感じの方が多いと思うんですよね。日頃、頭しか使わないっていうか。でもカヤックって、普段は使わない神経を使わないといけないじゃないですか。目や耳だけじゃなく、もっとこう触覚というか、全身のバランス感覚だったり、パドルから伝わってくる微妙な手応えだったり、お尻で感じるボートの水圧だったりっていう、その辺がすごい特別だと思うんですよね。それを感じとって、水の動きと一体になったり、いなしたり、当てこんだりしながらカヤックを動かしていく。転ぶと痛かったり、苦しかったりっていうところも… そういう、あらゆる感覚を研ぎ澄ませていくというのが、ちょっと日常では得られない時間ですよね。

 

そんな、日常では得られない時間が経験できるカヤックですが、試しに始めてみて、その後、続ける人と続けない人の違いはどういうところなんでしょうか?

 

割と…極めたい人が来ているかもしれないです。そういう人がハマるっていうか。

 

続けてる人の共通項として、『極め癖』があると?

 

そうですね、それはあると思います。

 

続ける人と続けない人の違いってなんだろうってことをよく考えるんですけど、最近、エンターテーメントじゃないですけど、そこにいたら楽しませてくれるっていう場所が多いじゃないですか。例えば、テーマパークにしてもそうでしょうし、テレビとか、何にしてもそうでしょうけど、自分がすごく受け身であっても、そこにいさえすれば、みんなでワーッて楽しませてくれる場所がすごく多いんですよね。
でも、その楽しさって3ヶ月もすれば飽きる。どんなに楽しいテーマパークでも3ヶ月毎日行ったら、「もういいや」ってなると思うんです。でもカヤックみたいに、自分のスキルを磨いて上達していく場所っていうのは、3ヶ月くらい経ってからようやく面白くなってくる。
そういう、成長するからこそ感じられる面白さを知っているかどうか、そして、最初から、楽しませてもらうことではなく、成長することを求めているかどうかっていう部分が大きいと思うんですよね。

 

そうですね、そう言われてみれば、確かに続けられる人って、自分で課題を設定して、なりたい自分や、やりたいことがあって、それで自分で練習方法考えるとか、そういう風に考えられる人が多いかもしれないですね。

それと、はじめはなかなか上達しない人のほうが、ハマるかもしれません。できない状態が長く続いて、もんもんとしたりするような人が。コツコツと練習した積み重ねが、ある日、一気に花開くように上達するんです。それがうれしかったりするんですよね。案外、昔はスポーツが苦手だった、みたいな人のほうが長く続くような気がしますね。

 

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