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Interview 10 鬼木祐輔さん

2018/08/01

損得を超えて『自腹で行かなきゃダメだ』という直感に従ったからこそ、そういう流れになったんだね。決して座して幸運を待っていたわけじゃなく、どうなるかわからないけど行動をして、出会いを生んだ。それにしても、スゴい巡り合わせだね。自分の中では、どうしてそういう巡り合わせになったと分析してるの?

…何ですかね。20代の10年間、すごい狭い世界で生きていて、辞めてからフリーになって、そうじゃない世界って沢山あるんだって、それこそ外国に行ったりとか。サッカー界って言っても、日本だけじゃなくて、違うサッカー界っていくらでもあるなって思って。

そうやっていろんな世界を見ているうちに一つ思ったんです。万人に受ける必要はないなって。
自分のことをいいって言ってくれる人が少なからずいて、その人の周りには大体同じような価値観の人が集まるじゃないですか、そういう人たちをちゃんと大事にして…じゃないですけど…ちゃんとそこで程度評価をされていったら、それなりにはなるんだなって一つ思ったのと、あとはもう、ありきたりですけど、人に恵まれたっていう感じです。

やっぱり、一流の人や奇跡的な縁に恵まれる人って、与えられた縁をすごく大切に育てていくんだよね。だから全部、縁でしかないじゃない。縁を一つ一つ丁寧に、育てているのが鬼木を見ていてわかるんだよね。もちろん本人は無意識にそれをやってるんだろうけどね。もちろん、どんな仕事にも手を抜かない姿勢もそうだろうけれども、そういうことが繋がっていったんだろうなって思うんだけどね。

確実に自分の実力以上の場所にいるんですよ、いつも、なんか。で、言い方が難しいんですけど、自分的には納得してない、こんなもんでいいの?って思うことがすごい評価されたりとか、逆に。

実力はそんなにないんだけど、そういう場所に担ぎ上げられるじゃないですけど、いるっていうか、そういう不思議な感じです。今も自分が実力以上の場所にいるし、それは人が引き上げてくれている。っていうか。
あとは、自分では、こんなものでいいのかな?って思うものが良かったって言ってもらえたりとかあるから…イチローが言ってたんですけど、「大人ってよく満足すんな!みたいに言うけど、満足ってしちゃいけないんですか?」ってイチローが言ってて、僕もそういう感じのようなことを思っていて、もっとこうなりたいなって満足するから思えるって言うか、同じようなことをもう一回味わいたいなって思ったりとか。
評価されたりした時に、こんなもんじゃないんだけどな、もうちょっと出来るんだけどな、頑張ろう、みたいな感じで思える感じなので、なんかそういうのがずっと続いているのかな?上手く言えないですけど。

僕もそうなんだけど、社会への入り口は一人の塾の先生でしかない。塾の先生として、小中学生に対して全力で授業をやっているだけなんだよ、単純にね。
そうやって小中学生に対してやってきた授業で言ってきたことが、大人の心に刺さってるんだよね。例えば経営者向けの講演会でも同じこと話してる。言っていることもやっていることも何も変わらないけど、だけど周りの人たちが見る目は変わるんだよね。そこは多分、鬼木の感覚と共通した部分があるんだろうなって思う。
要は、子供にちゃんと分かるって大事なことなんだなって思う。
大人になったら凄いことが出来るようになるとか、凄いことを理解できるようになるとかじゃなくって、子供も大人も結局同じなんだよね、必要としていることが。だけど、それを伝える伝わり方が子供向けにちゃんと伝えるように訓練されている人は大人にも伝わっていく、そう思うんだよね。
最初に「伝わらない」って話をしていたじゃない?
伝えるって本当にすごく難しいことで、例えば、自分しか知らないものを他の人に伝える本当に難しいよね。
実際には自分が思い描いていることをそのまま相手に理解してもらうって不可能に近い。不可能なんだけど、なんとかそれをやろうとする試みの中に、その人独特の伝わりやすさというものが出てくるんだろうと僕は思っているんだよね。
でも最初から大人相手だったら、ある程度のところで線を引いている自分がいるんだよね。線を引いているっていうか、「ここまで言ったらちょっと、逆に失礼なのかな?」っていうラインってあるからね。
子供の場合はそのラインがあんまりないじゃない。もっと分かりやすくしてあげなきゃっていう言い方になるから。案外、そういう小さい子に分かりやすくっていうかね、そういう訓練が「感覚」を伝えることに役立っているんじゃないかなって思う。
それは、鬼木の本を読んでもすごく感じたんだよね。
例えば「ニョキッ」ていう動きの言葉の表現だってさ、あれも「ニョキッ」って言われたって(笑)。普通に人は「ニョキッ」って言わないでしょ(笑)
なんだ「ニョキッ」ってって(笑)もちろん、本を読んだらちゃんとわかるようになってるけどさ。

小学生と練習している時に「これマネして!」って言って見せるんですけど「動きをマネして!」って言っても全然出来ないんですよね。

でもあるとき「これ、ニョキッて感じするじゃん!」って言ったら、ヒットしたんですよ(笑)。そしたら、「おぉー!それそれそれ!」ってすごいテンション上がって、「ニョキ!ニョキ!」言いながらずっと動いてるんですよ(笑)。
「おぉーそれそれ!」ってなって、小学生に伝わったんなら、みんなに伝わるんじゃないかな?って思いましたね。

素晴らしいよね~!「ニョキッ」って言葉のセンスが。それにしてもあの身体の動きは、一流プレイヤーの動きを見てて分かったの?                                                                                               

なんか、ある日気づいたんですよね。よく見せる動画なんですけど…(日本対ブラジルの映像)
ネイマールと日本代表が走っているんですけど、全然違うんですよスピードが。ネイマールの方がめっちゃ速いじゃないですか。なんでこんなに速いんだろう?って思いながら見てたら、動きが全然違うことに気づいたんですよ。
例えば、1アクションし終わった時のネイマールのシルエットが、こういう感じなんですよね。で、後ろにいる日本代表のシルエットが、こういう形なんですよ。それが単位時間あたりの移動距離がスピードって考えた時に一歩移動した時の距離がこれだけ違うんですよ。(画面に線を書いて一歩の歩幅の違いを並べてみせると、ネイマールの方が1.5倍ほど長いのがわかる)これだけ違えば速いに決まってるって思った時に、どこか違うんだろうって見てたら、ここ(腰のライン)から上(上半身の使い方)が違うんですよ。

本当だね!ネイマールの方が上半身が「ニョキニョキ」してるけど、日本代表のディフェンダーは上半身が棒状になっているのがはっきりわかるね。

「サッカー」って「フットボール」なのでみんな脚とかボールを見るんですけど、僕が言うのは、「僕と出会ってしまったからには脚とボール見ないで。ユニフォームの胸のところ見ててください」ってよく言うんですけど、そうすると、めちゃくちゃ動いているんですよ(ネイマール)、で、こっちは(日本の選手)全然動いてないんですよ。

あぁ~なるほどね!いわゆる、ニョキニョキしている動きってやつね。

ボール触る度にめちゃくちゃ、ここ(上半身)が動くから脚が付いてくるっていうか…これを見せて、「ニョキニョキしている感じしない?」みたいな。
でも、それってサッカーだけじゃなくて、例えば、陸上100メートルで10秒ジャスト出した山縣選手と、ウサインボルトが一緒に走っている映像があるんですけど…山縣選手は全然上半身が動いてないんですよ、とにかく脚がいっぱい動いているんです。でもボルトは上半身がめっちゃ動いているんですよ。

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