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Interview 10 鬼木祐輔さん

2018/08/01

それは例えば、ネイマールとかは子供の頃からサッカーやっていく中で、誰に教わるでもなく自然とそういう風になっていったということかな?

そうだと思います。そのレベルでもずっとこれをやり続けている人が上のレベルにいるんだと思います。

なるほどね。それって誰かに教わったらそういう動きになるもんなの?

僕も、海外に行くまでは、「トッププレイヤーってこういう動きをしてるから、こういう動きをしたほうがいいんじゃないか?」っていうアプローチをたくさんしていたんですけど、向こうに行って思ったのは、サッカーちゃんとやったらみんなこうなるんですよ。
でも、日本人ならないんですよ。なんでなんだろう?って思って。
そもそも「こういう風に動こう」って思ってるからダメなんじゃないかって思い始めたんです。それから言葉。言葉の持つ物事の捉え方が日本語とサッカーを得意にしいてる国の人たちは全然違うって知ったんですよ。
例えば、このボールがどこに向かうかっていうのを認識しづらいんですよ、日本語の概念で物事を捉えると。でも、英語とかラテン語系の言葉って必ず主語があって動詞があって、それが何に対して影響を及ぼしていくかっていうのを言わないと、ちゃんと理解ができない言葉なので、ボールはどこに向かうのかがはっきりしている。

目的地に対して吸い込まれていく、じゃないですけど、そういうような概念で多分、物事を捉えている。そう考えてサッカー見ていると全然違うんですよ。日本人がサッカーやるといつまでもボールと繋がっちゃうんですよ。ゴール目指しているはずなのに、ボールに意識を持っていかれちゃうんですよね。でも、海外の選手たちって、ゴールに吸い込まれるように移動していく過程にボールがあるだけ、みたいな感じになってる。全然違うんですよね。
帰ってきて、日本でサッカーを観るとマジで気持ち悪くなるんですよ(笑)別の競技にしか見えない。

それは、子供たちがやっているのを見てってこと?

いや、プロもです。Jリーグも見に行ったんですけど、別の競技なんですよ。
何かをしなきゃっていちいち思ってやってるっていうか。攻撃時だったらゴールに進まなきゃいけないのに、意識がボールなんですよ。

なるほど、なるほど。

だから、速攻っていうんですか、カウンター入った時の迫力も一切でないんですよね。
あとは、守備も一緒で、後ろ向きに下がらないといけないんですよ、守備って。
ここ(目の前の相手の足元)でボール取らないといけないじゃないですか。いつまでもそこに意思があるから、かわされちゃう。結局、今ここにある体を動かして動いているやつらと、スッて目的地に対して向かって進んでいるやつらと絶望的な差があるんですよ。
地面蹴って頑張って耐えきれたやつが日本の頂点にいるんですけど、目的地に対してスーッと引っ張られているこいつらなんかとは、大きな差があるんですよね。
日本人すごい頑張っているんですよ。でもそのベクトルを間違えているから差が開く一方で、このままでは一生追いつかないっていうか…

例えば、守備の時のステップだって日本だと絶対守備なんてできないやりかたでやってるし、そう教わる。海外の選手を見ていると「こうやってるから」って同じ動きを分析してやろうとして地面をけってスタートを切ってる。ところが、あっちの選手はそうじゃない。ただ、へその向きを動く方向に変えてるだけなんですよ。
でも、結果的に脚で地面を蹴っているように見えるから、それを誰かが、なんとかバックステップだってやり出したりとか、「クロスステップ」だって教え出したんですよ。
そうすると、進みたい方向とは違う方向に、ヘソが向いてるのに、必死でステップで何とかしようとしてる。そんなことをすごく細かくやるんですよ、日本人は。

なるほど、日本人らしいね。分析が。

他にもサッカーの基本は「止めて蹴る」みたいに言うんですけど、蹴るための過程が「止める」なのに、「止めて、蹴る」んですよ。だから、いちいち遅いんですよね。速いパスが来た時って、一旦止めるために片足を上げるじゃないですか。でも、こうやって片足を上げて立っている間って人間の体って移動しないんですよ。片足上げた瞬間って、絶対に体重を支えるためにもう片方が立ってないといけない。だから移動しないんです。

海外の選手たちは何をしているかって言ったら、蹴るために体の向きを変えている過程で、片足立ちになる瞬間があって、その時にボールが止まるだけなんですど、日本人は分析して説明するのが好きだから、「こうやって足動いているな」って思ったら「止めることを意識させて」
みたいにやっちゃう。結果、全部ワンテンポ遅いんですよね。
でも意識の置き所を変えるだけで、同じような動きをしているようでも、全然動きが変わるよ、みたいなのを今やっていますね。
僕は、チームに毎日いるコーチじゃないので、普段の練習でこういうことを意識してやったら、やりやすくなるんじゃないですか?みたいなのを色々なところで提案したりしているんですけどね。

『ニョキ』とか『シュッ』とかだけじゃなく、『安心して下さい』(笑)とかちょっと教わるだけで視点が変わる指導が満載だということはわかったけど、鬼木にそういうことを教えてもらいたいっていう人がいたら、どうすれば?

はい、全然行きます。スケジュールが合えば。

えぇ~それはいいね!今はトルコにいることが多くなってはいるけど、日本にいるときは教えてもらえるんでしょ。だって、日本代表の選手で、しかも中でもそれを代表するような長友選手が取り入れている練習メソッドを普通に小中学生にも教えてもらえるんでしょ。しかも直接。それってきっとサッカー人生変わるよね。

しばらくは日本にはいられませんけど、映像でメソッドは公開もいていますし。誰でも学んで試すことはできますよ。

ちなみにさっきから出てきている「ニョキニョキする動き」っていうのは、実際の練習や試合ではどうやって取り入れてサッカーに活かしていくの?

最初の意識付けみたいなところでは、僕は『ニョキップ』って呼んでるんですけど、スキップにさっきの『ニョキニョキ』した動きを合わせるんです。

「スキップ」ってこうやってモモを上げる、モモあげてるってことは、持ち足で地面蹴ったりとか、持ち足が引っ張られているんですけど、「ニョキップ」は、はねるときに上半身が伸びるんですよ、こうやって。

そうすると、1アクションで動ける幅が変わるんですよ。166センチのやつ(鬼木本人のこと)がここにいたら先生(喜多川)はフリーじゃないですか。(ボールを持っている側としてはその距離にディフェンダーがいてもフリーだと感じる程度の距離離れている)
でも「ニョキップ」できると、1アクションでここまでこれるんですよ。(あっという間に距離を詰められる)

サッカーは、走り回る競技だと思ってますから、どうしても足を動かそうとしちゃうんですけど、そうじゃなくて、身体の重心を移動するだけなんですよね。

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