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Interview 04 西田英樹さん

2017/09/15

 

そうやって年齢が違う、それこそ入ってきた経緯も、時期も違うっていう子どもたちが一緒に生活するようになっていって、やっぱりいい感じの仲間意識みたいなものが育っていくんですか?

 

残念ながら、仲間意識が悪い方向に出る方が多いと思います。すごく力関係に敏感な子が多いので、良く言えばリーダーなんですけど、悪くするとボス化してしまうこともあるんです。そうなると、僕なんかよりよっぽどそっちの子の言うことを聞くなんていことがあるんですね。だから子どもたちの中に変なボスを作らないように注意はしています。

でもやっぱりいいリーダーになってくれる子とか、誰からも慕われたり見本になる子にはなってほしいと思っているので、そこら辺は難しいですけどね。

自主的にさせてあげたいところと、自分中心にさせないようにしなければならないとことのバランスには神経を使っています。

 

それこそ、いい意味での仲間意識になればいいですけど、悪い仲間になったら大変ですよね。

 

そうなんですよね。その辺のことを子どもたちにもわかって欲しいんですけどね。

ここで、たまたま出会ってしまって、退所してからも付き合いが続く子もやっぱりいて、そうなると良くないことが多いんです。足の引っ張り合いというか。共犯関係になって何かやってしまったりとか、深く知らない関係であってもどんどんと繋がっていって、仲間に引き入れられて利用されてしまったり、気付いたら抜け出しにく状態になってしまうとか、男女のことも含めてね…ここを出てから、一緒になって助け合ったりいい意味で刺激し合う仲間になることは残念ながら多くはないと思います。

 

そう考えると、その線引きというのは難しいところですね。前向きな仲間意識は育てたいけど、つながりが強くなると一緒になって悪いことをやる可能性の方が高いのであれば。

 

結構、ここに来る子は、学校でも地域でも居場所がないというか、友だちづきあいが下手だったり、弾かれちゃってる子が多いんですね。

私らからしてみたら

「そんなこと言うたら嫌われるよ」

とか

「そんな言い方は好かれないよ」

って思って、アドバイスのつもりで言っても
あんまり、自分自身が好かれた経験が少ないのか、ピンとこない反応が多いです。

ここでは、楽しいこともしんどいことも一緒に経験します。仲間外れにしないようにとか特定のグループをつくらないように指導しています。そのせいか、友達がいっぱい出来たっていうふうに思ってしまうのかもしれません。もちろん、いい部分でもあるんですけど、ある意味で特殊な環境です。

矛盾しているようですが、嫌われたくないと「断る勇気」が持てない子が多いのも入所している子の特徴でもあります。

 

もっと早い段階でここをこう押さえておいたら、ここにはこなくて済んだのにとか、もっと早い段階でこういうことをしてあげておけば、今とは全然違ったのに…ということを感じる部分はあるんですか?

 

やっぱり、一番は本当にこう、幼少期にお母さんや家族に甘えることが出来ていれば良かったのになっていうのはありますね。事前の資料を読んだり、子どもたちの様子を見てたら、当たり前に甘えられていないといけない時期に、お父さんとお母さんはケンカばっかりしていたとか、お母さんはDVから逃げ回っていてそれどころじゃなかったとか、夜の仕事があるので、家でずっと大人がいてくれなかったとか…。

そういうことが続いて大人に対して冷めてしまっているというか、どうせもう願っても叶わないし、というような何か諦めみたいなものを抱いてるんですね。無理やりにでも自分の中で納得させないと、(精神的に)もたなかったんやろなっていうね、そんな風に思わないとやってられへんかったんやろなっていうようなものがある子は多いと思います。

 

そういう子たちが入ってきて、最初に接するときに気をつけることってあるんですか?

 

過去とか家庭事情のことは人それぞれにあるけれど、それを理由に怠けるとか、悪いことをするっていうのはやめなさい。逆にそれを糧にそういう辛い経験とか寂しい経験したからこそ、今度は自分の子どもや家族にそうならないようにしてやれる、そういう強くて優しい大人になれるように…っていう話はしますね。

 

そんな過酷な環境に育って、犯罪に手を染めてしまって、ここに来ることになった子どもたちが、ここを出てから、自立できるようになる、もっと言えば、二度と犯罪に手を染めない人になるためには何が必要だと思われますか?

 

一番は、どんな人と出会えるかだと思いますね。いい出会いをたくさん経験して欲しい。
でも、いい人と出会いたいなら、まず僕ら自身がいい人になっていかないと。まあ、「いい人」という定義は難しいですが、類は友を呼ぶじゃないですけれども、

「やっぱり似たような人がよってくるよ」

っていうような話は良くしてるんです。

周りの人に自分が必要と言ってもらえるようになったら、自分の居場所が持てたということだと思います。周りの人にそう思ってもらえるようになったら変わると思います。

ここを出て新しい環境で再スタートしますが、うまく軌道に乗っていける子は多くないというのも事実です。

自分が安心して居られる居場所がなかったというか、周りにいてくれる人の中では居心地がよくなかったのだろうなと私は考えています。

 

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