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Interview 04 西田英樹さん

2017/09/15

 

なるほど、大切なのは、いい意味で「あなたのことが必要だ」と言ってもらえるような居場所だということなんでしょうが、それを自分で作り出すことができる力がなければ、悪い意味で「お前が必要だ」と言って近づいてくる人たちの方に引っ張られてしまうということなんでしょうね。

 

お仕事内容を伺うと、人間として悩みや葛藤が多い仕事だと思うんです。しかも、そこに通勤して仕事をしているわけではなく、言わば自分の自宅の中に彼らが住んでいるようなものですから、オフの時間がない。それだと気持ち的にすさんでいくこともあると思うんですよね。でも、やっぱりこの仕事を続けられるというのは、どうしてなんですか?

 

本当に、喜多川さんの本だったり、CDだったり、話だったりを聞いて元気をもらってるんです。不満が湧いてきたときは「心晴日和」、成長していないなというときは「スタートライン」みたいに気分に合わせて読ませていただいています。

子どもに変わってもらいたいんだったら、子どもたちに変われって言うんじゃなくて、「変わりたい」って子ども自身が思えるような環境を作っていくしかないと思います。

そういう意味で寮長である僕の生き方は重要だと思っています。

職員同士のつながりもすごく大きいです。お互いに支え合ったり、刺激し合って…個人的には先輩職員にずっと助けてもらってきましたので、今度は自分の番だと思っているのですが、気づくと後輩が助けてくれていることがたくさんあります。

一人では頑張れないことも誰かが一緒にいてくれるからがんばれるという環境がここにはあります。その一番は子どもたちです。彼らに悩まされるのですが、結局子どもたちに元気や勇気をもらっているんですよね。

 

本や勉強会などだけでなく、職員同士の繋がりや、子どもたちとの関係から勇気をもらっているんですね。
でもやはり「まずは、自分が変わることから」と考えていらっしゃるのが素晴らしいですね。
西田さんご自身の変化に対して、子どもたちの変化を感じますか?

 

自分でははっきりとしたものはないのですが、子どもを観る視点や角度が以前とは変わったような気がします。そのせいかどうかわかりませんが、屁理屈を言ったり職員の揚げ足取りをして指導に手を焼いていたような子に対しも冷静に対応できるようになってきました。そうなると、子どもの方が出方を変えてくるというか態度や行動に攻撃性が弱まってきたような経験がありました。また、子どもたちに対し「何のためにこういうことをするのか」という目的や意味を伝えたり、どんな結果になってもそれが次につながるように受け止め方の幅が広がったように思います。

 

西田さんと初めてお会いしたのはもう何年も前のことですけど、僕のところに見えて、「寮長やってます」としかおっしゃらなかったんで、その雰囲気や笑顔から、「楽しそうだな」「きっとみんなで楽しい寮生活なんだろうな」と勝手に思っていましたからね、僕は。

 

それが実際にお話を伺うと、想像していた寮生活とは全然違うじゃないですか。あのいつも楽しそうな西田さんはどこからくるんですか?

 

しんどいことも楽しいことも同じぐらいあります。僕自身の「楽しい」の定義も変わってきたんですが、この状況を楽しまないと、それが自分の仕事と言うよりも、生活そのものなので、嫌だ嫌だと思いながら、過ごすのは子どもたちにも失礼だし、自分の人生そのものがつまらないものになってしまうと思うんです。だからできる限りウキウキした気持ちで、日々生活するようにしていますね。

 

この、お仕事の中での嬉しい瞬間はなんですか?

 

明日卒業させる、明日退所させるという日が一番嬉しいですね。一番、やっとスタートに立たせられたというのと、これで一つやり遂げたなとか思える瞬間なんですよね。でも、また次の日には新しい1日がスタートするんで、奥さんとも、「あの一日だけやったな」みたい話はしたことがあります。

あとは、退所させた子が時々訪ねてきてくれたり、風の噂で落ち着いて生活をしていると聞いたりするともうちょっと頑張ろうと思えたりしますね。

 

それでも、続けるためには、毎日気持ちを作り直す必要がありますよね。

 

はい。だから本を読んで、心の洗濯(リセット)をしています。

僕はそんなに飲まないですけど、お酒を飲むことで次の日に引きずらないんやという寮長もいます。先輩も含めてね。逃げられないし、誰とも変わってもらえないので、きつい時もあります。僕は本に助けられることが多いです。喜多川さん、これからもよろしくお願いします。

 

そう言っていただけるのは、光栄ですね。ありがとうございます。

 

今日は、親の愛情の大切さ、いい人との出会いの大切さ、その出会いのために自分がいい人でいなければならないこと、そして、自分が変わることで子どもたちが変わるなど、とても参考になるお話がたくさん聞けました。

貴重なお話をありがとうございました。

 

 

 

<プロフィール>

西田英樹(にしだひでき)プロフィール

1972年(3月18日)兵庫県生まれ

1998年 児童自立支援施設 大阪府立修徳学院に勤務

2001年 男子寮を夫婦で担当する男子寮を担当

17年目になる。

次世代を担う児童自立支援施設の夫婦(でがんばりたい)職員 の発掘を目指しています。

 

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