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Interview 06 濱田 実さん

2017/12/26

 

「みのり幼稚園」さんの保育を見学させていただくのは3回目ですが、かけ算九九を全部言えたり、西武池袋線のすべての駅名を園児たちが漢字で読めたり、『雨にもマケズ』や杜甫の『春望』、芭蕉の俳句の暗唱、しかもそれを、姿勢を正して20分も全員が集中してできていることに、いつも驚かされるんですが、このような指導を始めたのはどうしてなんですか?

 

60年前、ベビーブームも手伝って幼稚園がたくさんできました。この時期幼稚園を創ったのは広大な土地を所有している地主さんが多かったと思います。でも、祖母は秋田から出てきて土地も財産も持っていませんでした。長男を病で失った悲憤と小学校教員時代の想いで、真の幼児教育をこの地でやりたかったんです。

みのり幼稚園は68年前に、僕の祖母が創立しました。当時としては珍しく、そのころから普通の保育に加えて、自由遊びも取り入れながらもリトミックや、文字指導、音楽指導を行ったんです、知育面でも一生懸命取り組んだんですね。なぜかというと、祖母は、もともとは秋田で小学校の先生をやっていたんです。でも、先生をやってみると、人格の基礎基本を育てるには小学校では遅いと思ったんですね。もっと前の段階から家庭環境も含めて見直さなければ真の教育はできないと。そういう想いがずっとあったようです。

自分の子どもに対しても、昭和20年代に、

「これからの時代は、女の子は大学を出なければダメだ」

と言ってですね、秋田から娘を連れて東京に出てきてしまうんです。行動力がすごいんですね。

祖父も、その頃秋田で村長選に出馬したりとか、こっち(東京)で写真館を経営したりとか、結構ベンチャー精神旺盛な男で、東京にも拠点があったんです。

というわけで、祖母は6人の子どもを育てながら、長女を大学に行かせていた。そんなとき、ひょんなことから幼稚園をやるチャンスに巡りあえたというのが、『みのり幼稚園』の始まりでした。

祖母はこの地に『真の幼児教育』の場を作りたいと思ったんですね。

秋田から出てきた祖母らしく、幼稚園が苗床で、苗をしっかり育てて稲にする。そして、実れば実ほど頭を垂れる謙虚さこそが、人格者として大事だというんで、園のマークを稲穂にしました。しかも根っこがちゃんと稲穂についているんですよね。

それ以来、祖母は常に新しいことを取り入れ続けてきました。

卒業生が体育が苦手で小学校を不登校になったと聞いたら、すぐに体育の指導を取り入れたりとか、親は過保護過干渉が増えてきたと感じたら、父母会活動をやって、お母さん教育に力を入れ始めたり…。数十年も前にそういう考えを持っていたんですね。すごく先見性のあるすごい人だったと思います。

その基本姿勢は今も変わっていません。

入園して三年後に卒業したときに「みのりにいてよかった」って思える三年間に、もっと言うと、その後の人生でも「みのりに行ってよかった」って思ってもらえるだけのことを、僕らは本気でやりたいっていう話を今も説明会でしていますね。

 

先生方が子どもたちが通っている3年間のことをだけじゃなくて、その先の人生のことを真剣に考えていらっしゃるということですね。

 

そうなんです。そのための3年間。教育は未来のためにある。その考え方がすごい大事かなって思うんですよね。

 

朝、子どもたちが、ずっと走り回っていますが…。あの活動は?

 

子どもの脳が求めていることを系統立てているんです。

2,3,4,5歳というのは、身体を動かしたくてしょうがない。落ち着かないし、じっとなんかしていられない。

これまで脳科学を勉強してきた僕なりの一つの結論ですけれども、子どもって二足歩行を安定させるために、体を動かしたいという欲求が脳から出されているんです。それを満たしてあげる為に体育ローテーションで心ゆくまで身体を動かすから、そのあとは、子どもたちは座って集中活動ができるんですね。

 

確かに、体育ローテーションのあとの、子どもたちの活動は、見学しているこちらが驚くほど、全員が背筋を伸ばして微動だにしない姿勢で、長時間活動を続けられていますね。
体育活動なしで集中活動をしようとしても、子どもたちは落ち着きがなくなってしまうんですね。

 

年中、年長は自己抑制が多少できるようにはなるんですけどね、年少は難しいですね。

やはり、崩れるというか。

子どもたちは身体を動かしたくってウズウズしていますから、まずはその欲求を心ゆくまで満たしてあげる。そうしないと、ああやって腰骨を立ててじっとすることはできませんね。無理矢理、座らせるんじゃなくて、身体を動かすことに満足したから、次の活動に興味を持ち意欲的に集中したいという気持ちに子どもたちがなっているんですよね。

朝、体育ローテーションをやることによって、今日一日こういう活動、このリズムとテンポで行こうという感覚なんですね。そのリズムとテンポを繰り返すことを、活動の中で大切にしています。

 

それにしても、体育ローテーションのあとの集中活動は、幼稚園児とは思えないほど、レベルの高い内容をものすごいテンポで進めていくんですね。驚きました。

 

僕らがやっていることは、見た目はかけ算九九を言ったり漢字だったり、漢詩や詩など、もの凄く知育的な活動や、前倒しの教育のように見られがちなんですけれども、漢字も九九も興味、関心を持たせるツールでしかないんですね。だから全然そんなことなくて、全ての活動は人格の基礎基本になるものを育てる全人教育なんですね。ただ、結果として、それによって意欲だとか感謝する気持ちだとか、言語感とか、利他感とか、そういうものが育っていくというのが、みのり幼稚園の教育活動です。

いわゆる、人間性知能育成と言われるもの。

前頭連合野、小脳や大脳、右脳や左脳というのは別々に働くんじゃなくて統合的に同時にいろんなところが発火して動いている。だからそれを促してあげる。そういう脳を活性化させる活動なんです。

 

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