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Interview 06 濱田 実さん

2017/12/26

 

人間の土台作りということでしょうか。

 

まさにそうなんです。

『根っこの教育』って呼んでいるんですけど。点数などによって数値化できないものですよ。

地表に出ているんじゃなくて、土の中に埋まっていて、それが深く広がるほどいい。大木に成長するためには、そこにしっかりした根を生やすということが大事。嵐や風雪にさらされながらも折れずに、しっかりまっすぐ伸びていくためには、根っこが大事で、その根っこを作るというのが幼児期の大切な役割だと思っています。

 

最終的に今彼らが朗唱している知識を忘れてしまう日が来たとしても、それを手に入れるまでの過程や経験、常に腰骨を立てるという習慣が見えない土台になっていくということですかね。

 

そうですね。一例でしかありませんが、この活動を続けていくとね、本好きな子になるんですよ。漢字に対する恐れがないでしょ。ひらがなしか読めないと、漢字に対してもの凄く抵抗感があるんですよね。でもうちの子どもたちは漢字に抵抗感がないです。むしろ「どうやって書くの?」という興味が凄いんです。本を読み切るだけの集中力も育ってますから。

子どもは知の欲求が強くて知ってるっていうのが大好きですからね。

それが、徐々に本好きにつながっていく。

園としても、子どもたちに本に触れる機会をたくさん増やしてあげたいということで、保育室には膨大な量の絵本が置いてありますけど、年中の後半から図書活動をやるんですね。お母様方が司書代わりになって子どもたちに本の貸し出しをするんです。

そうすることで、小学生になったときに図書室を使うのが当たり前になるように、そういうことに慣れて欲しいという思いからやっています。結果として、小学生になったら月に30冊とか、多い子だと月80冊とか読む子もいます。

 

それは、誰もがそうなれるということでしょうか。

 

もちろんなれます。幼稚園ですから月齢差はあると思うんです。4月、5月生まれで2月、3月生まれの子では時期は違います。この時期の一年というのは、運動においても圧倒的ハンデになるんですよね。だけど、子どもは「僕は2月、3月生まれだからできない」とは言いません。早生まれの子ども達は伸びしろはすごいと思う。というのも、子どもって模倣が凄く好きなんですよ。だから周りにできる友達がいた方が、刺激があるんですね。弟と一緒ですね。兄貴がいる弟は自分も同じことに挑戦したがったり、何でもすぐできるようになるじゃないですか。それと一緒で、2月、3月生まれの子って、学年で区切ると確かにちっちゃい頃ってできないことがたくさんあるんです。だけど、年長ぐらいから凄く花開いてきますね。身体は小さいんだけどしっかりしている子が多いんです。

 

早い時期に同じものに触れられるというのは、メリットなんですかね。

 

そこなんですよ。脳科学的にみても様々な挑戦は、0歳に近い方が環境の影響が大きいですし、そこに「自分ができないことをできるお友だち」がいると模倣したくなる。それはもの凄くいい刺激になるんですよ。

 

いわゆる普通に考えられている、不利な条件というのは必ずしも不利ではないということですね。

 

幼児期にはそれはないですよね。それが不利だというのは大人の言葉ですね。親御さんはいつも心配していますよ。「うちの子3月生まれだけど大丈夫でしょうか」って。そうやって線引きすると「2月、3月生まれだから…」って子どもの側も言うようになっちゃうんですよね。

だから、

「月齢が離れた子と一緒に活動できるのはラッキーだと思ってください。伸びしろがいっぱいあるんです。だから小学校に行っても成長し続けます」

って伝えるんですけど、本当にそう思いますよね。

 

体育活動や、瞑想、そして、集中活動。そういった活動を通して、子どもの中にどんな力を育てたいとお考えか、もう少し詳しく教えていただけますか。

 

まずは『生きる力』ですよね。

長い人生、生きていく中で、かわいがられる子に育てることが大事じゃないかなって思うんです。ではその、かわいがられる人でいるためには何が大切かということなんですね。

まずは、躾がきちんとできているということがものすごく大事だと思うんですね。それから、感謝の言葉が述べられること。何かしてもらったときにありがとうございます。って言えること。あとは、利他快感といいますか、『喜ばせ癖』って言うんですかね。そういうのがすごい大事だと思うんですね。

それは、大人に迎合したり、媚びるということではなくて、幼児期には食べたら「ごちそうさま」と言うとか、幼くても家の中で役割を持ってお片付けを手伝うとか、そういうことが自然とできる子になることだということです。それが最終的に大人になったときに、誰からも愛され、信頼され、必要とされる人間につながっていくような気がするんです。

それが子どもたちに対する一つの願いですね。

それともう一つは丈夫な身体ですね。

僕らはその身体作りに関してはもの凄くこだわりを持っていて、丈夫な体は大事ですよ。体躯がしっかりしていないとすべてにおいて滞る。立腰にこだわりを持って指導をしているのもそれがあるからですよ。

腰骨を立てるから内臓が正しい位置に来るし、背骨がS字のきれいなラインを描いていれば、脳からの信号も神経を通って指先にきちんと行き届くし、それから、感覚も正常に伝わってくる。そういう身体の本来持っているものをきちんと発揮できる身体に育てていくことを大切にしていますね。

今、中高生でも、低体温とか、女の子だと生理不順だとか、自律神経失調症とか、若いのに抱えている子が多くなってきています。それが結果的に鬱病につながったり、あるいは、何か辛いことがあったときに、簡単に心が折れて自分の命を絶ってしまうことに繋がったりということもあると思うんですよね。

有田秀徳さんという方が『セロトニン欠乏脳』という本を書かれています。セロトニンが欠乏するとキレやすくなる、鬱病になりやすい、というようなことなんですね。じゃあ、セロトニンはどんな時に分泌されるかというと、『飢えること』『咀嚼すること』『有酸素運動』、それから『凍えること』、この4つでしか分泌されない。

だから、常に満たされていると、ダメらしいんですね。

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