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Interview 07 白水 剛さん

2018/01/29

最初は、本当に最後にちゃんと全員ができるんだろうかっていう不安を抱えながらも、「できます!」って言い切ってやっているわけじゃないですか。その覚悟がやっぱり園の側にないと…できないことですよね。今日も保護者への説明で「必ずできますから」と白水先生おっしゃったじゃないですが、それを言い切るというのがスゴいことですよね。まあ、今ではもう不安よりも自信の方が大きいのかもしれませんが。

 

過去、結果を出してきていますから。それと経験から、もう大丈夫だってもう分かりますし。
何より、先生たちの「必ずできるようにさせる」という信念と言いますか、全員できると信じる気持ちというのが先生達に浸透しているので。
ただ、そのやり方がハード過ぎたり、叱ったりし過ぎたりすると、僕はそういう教師のパワーだけでやらないでほしいと言うことを伝えることはあります
結果だけを求めて、運動嫌いとか、勉強嫌いになってまでやらせることじゃないですからね。
実際には、プロセスが良かったら、無理矢理やらせようとしなくても、必ず全員できるようになるというのも僕自身分かってきているんです。

先生たちは、指導に熱に入るあまり、つい色々なことを急にやらせたくなるんですけど、それでは怪我にも繋がるし、やっていることを嫌いになるかもしれない・・・焦らなくても、スモールステップを踏み、プロセスを重視すれば全員できるようになります。
また、先生達だけじゃなく、子供たちの意識も変化してきました。
以前は、「あれできると思う?」って聞いてたりすると、みんな「分からん」とかボーッとしていたんですよ。今、年中とかに「あれ年長になったらするけど、できるかな?」と言うと「できる!」って言います。
肯定的に子供はできる、やるもんだと思っているから。できるようになることがかっこいいって思っているから。

 

最初導入したばかりの頃はどうだったんですか?

 

最初は、「全て、できる訳が無い」と僕はそこは冷静に見ていたんです。
「3年後にできるようになろう」と決めてました。
3年後に男の子は逆立ち歩きを3mくらい、女の子はブリッジ前回転を全員できる目標を立て、
1年目は、男の子は三点倒立、女の子は後ブリッジ回転。その一点にギュッと絞らないとダメだと思いました。
まず1年目はこうで、2年目はここまで、3年目でやるんだって、その計画通りには行きました。でも三園揃うのには4年かかってしまいました。

 

先ほど関副園長先生ともちょっと話をさせていただいたんですが、本当に、一人ひとりをよく見ているなって感じました。
跳び箱も逆立ちもブリッジ回転も、発表会というゴールと言いますか、あと何日でできるようにならなきゃいけない…というのが決まっているじゃないですか。それなのに、現段階でちょっと届いていないかもしれないっていう焦りが指導者の側にあると、子どもも先生も悲壮感みたいなものを漂わせた顔でやっていることがある。
そいういうのを見たときに
「一番大事なのは、跳び箱が飛べるようになることよりも、跳び箱が好きになることだよ。どうやったら好きになるのかということを一生懸命考えて」
というような事を先生達に指導されるとおっしゃっていたんですね。
「どうしたら好きになるか」
そこをずーっと突き詰めて行ってできるようになっている!そういうことなのかなと感じたんですけど…

 

はい。そうですね。でも、好きになるには飛べることが一番。
飛べないのに、今日やっていた7段を飛ばせたって嫌いになるばかりですよ、恐怖心を植え付けてしまう。だからハードルを下げるんです。飛べないなら、例えば5段からでいい。
5段を何回も何回も飛ばせていく。これがスモールステップ
で、飛べるようになったときに「6段やってみる?」って聞いてみるんです。
「いや~」って言ったら無理をさせない。「5段でいいよ」って言っておくんですね。
でも、周りはどんどん上がっていく、そうするとその子に焦りが生じてくる。

「焦り」ってネガティブな言葉だと思われてますけど、僕は、お母様方に「悪い言葉じゃないんですよ。己を知って、これじゃいけないんだと思うから焦ってくるわけであって、それは跳び箱だけじゃなくて、片付けとか、衣服の着脱とかも全部入ってくるんですけど、子供が焦りだすということを決してマイナスに捉えないでください、成長したいという気持ちと同時に、己が分かってきたんですよ」ってお伝えするんです。
だから、周りがみんな飛び出したら、自然と「僕もやらなきゃいけない」って思うようになるんです。

やはりどんな環境で育つかが大事なんですね。

自分がいる環境でみんなができ始めたら、自分も乗っかっていかなきゃいけない、みたいな、そういう心理も子供ながらに持っているんじゃないかなって僕は思いますけどね。
そうやって飛べたら、好きになりますよ。できることは楽しいので!

 

僕も含めてですけど、教育に携わってきた人たちは、できるようにさせる方法はある程度わかっても、どうやってそれを『全員』出来るようにさせるのかっていうところが、すごく気になると言いますか…どうやって全員出来るようにさせているのかを、知りたいと思うんですよね。

 

やっぱり、一人ひとりをしっかり見るっていうところに尽きます。
この子の良いところは何だろう。課題は? 兄弟は何人いて何番目なのか。お母さんがどういう子育てしているのか…なんでもかんでも受け入れたり、甘やかしているのか、逆に出来ることはさせるという子育てなのか…
そういうのをしっかり見て、ご家庭にも園の方針を理解してもらわないと、全員できるようにはなりません。
だから、保護者には3年かけてメッセージを伝え続けています
そこでも、とにかく「好きにさせる」ということがキーワードです。
好きにさせるためには、無理強いばかりをさせてはいけない。
できるところからやらせていく。
開脚だって全然曲がらない子いますけど、最初は「3秒でいいよ!3秒以上するなよ!」とか言って、「4秒以上したら怒るけんね!」って言ったりすると、ニヤニヤしながらやリます。

そんな地道な作業をやっているだけなんですよ。ものすごく地味なんですよ
そしていつも、「明るくユーモアを持ち、時々ビシッと!」・・・僕が心がけていることです。

 

こんなスゴいことができるようになるんだったら、うちの子も白水学園に入れたいという保護者の方がたくさんいらっしゃると思うんですが、一方で「うちの子には合っていないんじゃないか?」みたいな質問がきっと多いだろうなって思うんですね。
だけど今のお話を伺うと、本当に3年間かけて、もう…気の遠くなるようなって言ったら変ですけど、本当に地道なちょっとずつ、ちょっとずつなんですね!
だけど、発表会もそうですけど、あれだけ見ると、その結果だけ見るじゃないですか。マスコミが取り上げるのも結果ですし。結果だけ見ると、なんかものすごい特殊能力が必要な感じに見えますし、そこに至るまでにもの凄いスパルタでやられるようなイメージがありますけど、実際にはまったく違うんですね。

 

も~とてつもなく地道な作業をず~っとやり続けています。根気はいりますし、やはり一人ひとりを見られない先生には先輩のサポートが必要です。

「合うとか合わない」っていう話になると、僕らのやり方で合わない子は一人もいません。個人対応しますので。
合わないのはお母さんが、「うちの子は無理」と思ってるだけかもしれませんし、「最初からそういう運動神経のいい子を集めている」と思われているのかもしれません。でも、そうじゃないんですよ。
だから僕は入園説明会の時に言うんですよ。
「入れたいんだけど、やらせてみたいんだけど、この園はうちの子にはハードル高いかな、と思うお母さんこそ、絶対入れてください!必ずできるようにさせますから!」
って。ここから先は親には言いませんけど、心の中では、何でもできる子、積極的な子は、他の園に行っても十分成長できるっていうのが私の本音です。
教育というのは、「できない子をできるようにさせること」が一番じゃないかなって思っているます。

 

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