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Interview 09 後藤めぐみさん

2018/04/29

なので、レッスンに参加した方が「おかしいな、前はできたのに」ということも増えてしまうんですよね。

だから、基本をしっかりやり直して、最初に身体に動きを思い起こさせるという時間が必要なんですね。そこは、きっちりおさらいしてからじゃないと、思っているようにボートを操ることはできないなって。それは、お客さんを観察していて見えてきましたね。

 

なるほど、そういう訳なんですね。
特に流れのある川の上のことですから、気を抜いてはいけないっていうか、油断してはいけないってところがありますよね。基本的なことを丁寧に毎回やっていくっていうのが、本当に大事なことなんだなって、僕も最近改めて強く感じるようになりましたね。
で、もう一つの印象的なことなんですが、川の上にいるときに、後藤さんの方を見るとどんな状況でも必ず笑顔なんですよね。もう満面の(笑)。緩やかな流れだけじゃなく、激しい瀬に入っているときも、ウェーブやホールで技をしているときも、いつも笑顔。強張った顔を見たことがない。そこに関しては意識をされているんですか?

 

笑顔については、どうなんですかね~あんまり、意識していないですけど(笑)
単純に漕ぐのが楽しいのもありますし…

 

講習に参加すると、自分の力量で全然大丈夫なところよりも、もう半歩先、ときに一歩先のところに、「ちょっと行ってみましょうか」ってな感じで、挑戦させてもらえるじゃないですか。その時に、こちら側としては、
「うわぁ~ここ行けるのか?」
っていう感覚を持ちながらそこに差し掛かるんですよね、自分のスキルと川の流れの激しさを比べた時に、「これはちょっと…どうかな~?」って思っちゃうと、恐怖心が湧いてくる。そのときに後藤さんの方をふっと見ると楽しそうに笑っているんですよ(笑)
「あ、笑ってる!」みたいな!「じゃあ、いけんのかな~」って思える。
「大丈夫ですよ~」って言ってるみたいな感じで、楽しそうに笑顔でこちらを見ているんですよね。それで安心するっていうところも結構あるんですよね。あそこでしかめっ面されて見られると、これやばいんじゃないんですかって思ってしまうかなと思うんですよね。 

 

そうですね。
その辺は、下る人、教わる人の気持ちとしては、恐怖心があると思うんですよ。そんな状況でも、いかに普段どおりに漕いでもらえるかってことは考えています。表情で安心してもらうっていうのも、無意識にやってるのかもしれませんね。

ごくたまになんですが、教える側としてもドキドキしているときが正直、あるんですよね。助けるのが大変な場所とか、ありますからね。「ここで沈したら(※ボートがひっくり返ることを「沈」という)すごい流されちゃう場所だ~」って思ってたり、「あそこ行っちゃうとちょっと危険な感じ」みたいなところもあるんですけど、それが伝わらないようにはしてますね。気楽に下ってもらうほうが、その人のスキルが発揮できるじゃないですか。ちゃんと持っている技術の通りに動ける。その方がリスクは少ないですからね。なので、その辺はドキドキしているけど、伝わらないようには努めています(笑)

私自身、マウンテンバイクとかもやってるんですが、急斜面を降りる時に、怖い時があるんですよね。その時にあえて笑顔を作っていくんですよ、口角を上げて。そうすると恐怖心がなくなるんですよね、リラックスできるっていうか、なので、まぁ、それが染みついたのかもしれませんね。(笑)

 

カヤックを始めた頃には、後藤さんにも恐怖心みたいなものがあったと思うんですけど、ご自身の恐怖心との向き合い方も、同じようにされて来たということですか。

初心者の頃は、何が怖いのかが明確にイメージできていなかったので、全部が怖いんですよね。でも、ある程度経験を積んでいくと、ここに行った時に危ないっていうのが分かるようになってくるので、「じゃあ、そこに行かないルートはどこ」っていうのが見えてから下るようになる。そうなってくると、「何もかもが恐い」ではなくなっていくんですね。

 

知識や力量が増えていくと、何もかもが怖いじゃなくなっていく、っていうことなんですかね?

 

確率としてはどうしてもあるわけじゃないですか、危ない方に行っちゃうっていう確率は。なので、その可能性に対しての怖さはあるんですけれども、経験と共に小さくなっていって、リスクを減らせてはいけるんですよね。逆に危険な要素は、楽しさのスパイスに変わっていくんですよね。

カヤックスクールの先生としては、参加される方の恐怖心を取り除いて、ベストパフォーマンス発揮してもらう必要がありますが、それをやる上で「笑顔」以外にも重視されていることはありますか?

そうですね、やっぱり「気持ち」の部分が大きいですもんね。ですから、私が先に下って見せるときに、いかに簡単そうに見せるかっていうところはありますね(笑)
それと、どこをどうやって見るかというのも、川下りでは必ず説明します。川下りの初心者には、一番いいルートの一本だけを見て下るようにって言いますね。わき目もふらさせないみたいな。(笑)
どうしても恐いから、岩を見ちゃったりとか、ホール(勢いと落差があるところで、返し波が起こる場所)を見ちゃったりとか。でも見るとそっちに向かって行ってしまうんです。だから、岩とかホールを見ないで、自分の辿るべきルートだけを見てもらうようにします。

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