Now loading...

Interview 09 後藤めぐみさん

2018/04/29

そうやって、我流で固まっていて、アドバイスに素直になれない人に対してはどうアプローチするんですか?

 

そういうときは違うアプローチを考えますね。言い方を変えるじゃないけど、練習方法を変えますね。

 

そこで素直になれないと前にいけないよ!っていう方向じゃなくってことですかね?

 

やっぱうまくできないと楽しくないので、そこはあえていじらず、別のところからうまくできる方法を、考えますね。

 

やっぱり「楽しくある」っていうのが一番大事なことなんですね?

 

大事!大事!
険しい顔してやっても伸びないじゃないですか~(笑)
なので、やっぱり楽しいかどうかっていうのはありますね。

 

参加している人が楽しいって感じられるようなことが大前提あるわけですね。
先生の側が「こうしないと伸びないよ」と決めるのではなく、この人はこうやって楽しんでいるんだから、それをベースにしてどうしたら良くなるかを考えて指導をされるということですか?

 

そうですね、やっぱり達成感が欲しくて来ている部分もあると思うんですよ、習いに来ている人たちっていうのは。わざわざ一日かけてカヤックを習いに来て「昨日の自分と全然変わらなかった~」っていうのだと、「また来よう」って思わないと思うんですよね。

なので、ちょっとでもできることが増えるとか、できなかったことができるようになるとか、っていうことは考えていますね。

ただ、モグラ叩きのように、これができるようになったらこっちがダメになって、みたいな感じで、一個一個潰すような形にはなってくるんですけど。

 

最初の頃はいいんですが、何回も来るようになると、来る度に成長するっていうのはすごく難しくなって来るじゃないですか。そういう伸び悩みの時期の生徒さんたちにはどのようにしてモチベーションを維持させているんですか?

 

違うボートに乗ってもらうとか。
例えば普段短いボートに乗っている人に、長いボートに乗ってもらうとか。そうするとやっぱり違う発見があって、それが芋蔓式に、自分のできなかったことが、「あ、こういうことか」って腑に落ちたりとかっていうのがすごくあるので、道具を変えるっていうのもいい発見があるんですよね。

あとは、場所を変える…ですね。いつもは流れのあるところでやっているんだったら、静水でやってみるとか、その逆も。

あとは練習方法も、前方向に進んでばっかりじゃなく、後ろ方向に下ってみるとか(笑)
出来ないことが出てくると、また楽しくなるわけじゃないですか。飽きちゃったりとか、つまんなくなっている時って、もう自分ができちゃっているって風に思っている状態だと思うんですよね。できないことがまだまだこれだけあるよ!っていうのが見えてくるといいのかもしれないですね。

 

ーーなるほど。今のは、ある程度できるようになっていることばっかりになって、つまらなさが出てくるっていうのですが、そうじゃなくて、逆に、これをできるようになりたいという課題があって、ずーっとそれに挑んでいるんだけど、いつまで経ってもできるようにならないっていう場合はどうするんですか?

 

一つは、課題を一個だけに集中することですね。

全方位で練習しているとなかなか上達を感じられないので、例えば「足を使ってみましょう」と決めて、その日は徹底的に足ばっかり気にして練習するとか、「重心の位置、体幹を気にしましょう」とか。

一点集中で意識していくと、それまでのぼんやりした全体の円からできる部分が突出してくるわけなので、それに引っ張られてできることが増えてくるというか。やっぱり上達を感じやすいですよね。なので、課題を一個だけに絞ってやることが多いですね。

上達できないのって一個だけじゃなくて、全部が関係しているからなんですけど、逆を言えば、一個ができるようになると全部が関係しているので、できるようになるんですよね。

 

その一箇所みたいなのを見つけて、じゃあ今日は足だけ、足を使う練習だけをしましょうっていうことをやっていくんですね?もちろんそれは状況によって、人によって全員違うっていうことですね?

 

そうですね、ベースとなる部分は上級者も初心者も一緒なのですが、課題は、状況や目的、人によって違いますね。どんな目標があるのか、苦手なことを克服するのか、得意なことをさらに伸ばすのかというのでも変えています。

 

なるほど。いやぁ、続けるための秘訣から、教える側にとって大切な心構え、基本をおろそかにしない指導の大切さ、伸び悩みの解消の仕方などたくさんのことを教えていただきました。
きっと、指導者の方にとってもいろいろと参考になるお話だったと思います。そして、指導者うんぬんは関係なく、誰にとっても普段使わない感覚を自然の中で研ぎ澄ますことで、生きる活力のようなものが育つということを何となく感じてもらえたと思うんですよね。
最後に、カヤックをしたことがない人に、その魅力を伝えるとしたら、ズバリなんだと思いますか?

 

カヤックは、人生を教えてくれる先生なんですよね。

視野が狭いと流れに翻弄されたりとか、どの流れに乗るかを事前に見る能力とか、あとは、瀬の手前は緩やかで、瀬の中はしっかり漕げとか、そういうところって、生き方と共通している部分が、すごくあると思うんですよね。
その辺は川の魅力の一つですね。

 

1 2 3 4 5 6