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Interview 12 白駒妃登美さん

2019/10/24

病床で日本の歴史を改めて紐解いていくうちに、気づいたことがたくさんあったんですけど、それが生き方を変えるきっかけになりました。

アメリカ型の成功哲学っていうのは、常に10年後の自分をイメージして、

その10年後に自分の夢を実現するために、5年後はこうで、3年後はこうで、1年後はこう、だから今はこれ!って、常に、「今」を「未来」のための手段にしているんですよね。

でも先人たちの生き方と向き合っていくうちに、そんな生き方をした日本人って、かつてはいなかったんだな…って気づいたんですね。

日本人はむしろ、「過去」も「未来」も手放して、「今」に全力投球してきた。

西洋人が夢を大切にしてきたのに対して、日本人は「夢」よりも「志」を大切にして生きてきたんだなって思って。

「志」というと、一番一般的なのは、「世のため、人のため」という感覚なんでしょうけど、

私の場合はちょっと違うニュアンスと言いますか…

「世のため人のため」と思ったら、嫌いな人の顔が浮かんで、「あの人のために頑張るなんてできない」って、アクセル踏みながら、ブレーキを踏んでいる変な自分がいるんです(笑)

それはどんな人の中にもいると思いますよ

だから私は、「大好きな人や大切な人を笑顔にするために頑張ろう」って思うようにしているんですね。

そうすると、アクセル全開でいけるでしょ!

要は、私の中では「夢」というのは「自分のために叶えたいもの」という解釈なんです。だから自分が死ねば夢は終わってしまう。でも「志」っていうのは自分を超えた存在、「世のため、人のため」あるいは、大好きな人や大切な人のため。

そういう志を持って生きていると、例え、肉体が滅んだとしても、その想いって誰かに受け継がれていく。

「あ!そうなることで命って永遠のものになるんだな~」って思って、そういう生き方にシフトしたんですよ。

そしたら、ありがたいことにこんなに健康になってですね!

だから、勇気をもらっただけじゃなくて、健康までもらった(笑)

それは本当に!すごい!自らの使命に気づいた白駒さんに、健康がやってきたというのは、その道を行けと何かに後押しされているということなんでしょうね。
でも、もう本当にそうですよね。「志」も「夢」も、今は多くの人の中で一緒くたになっちゃっていますけどね。

でも「いつまでも夢みたいなこと言ってないで現実を見なさい!」って風によく言いますけど、「いつまでも志みたいなことを言ってないで!」という言葉はありませんし…実は、全然違うものだということを子供たちには伝えたいですよね。
「志」っていうのは「自分の命を何に使っていくのか」
今、白駒さんがおっしゃっていたように、そういうことなので…
「どういう生き方をした人がいたのか」っていうのを知らなければ、受け継ぐことはできないですもんね。だから歴史を学ぶことが大切ですね。まあ、歴史というと、何年に何があったという学校の歴史だと思われるといけないから、過去に生きた偉人の生き方といったほうがいいかもしれないですけれども。

僕が子供たちに伝えるときには、「夢」は自生する、要は自分の内側から湧いてくるけれども、「志」っていうのはもらうものなので、自生しないぞっていうような話をするんですね。
だから、誰かからもらいにいかなければならない。つまり、自分の前に「こんな生き方をした人がいた!」っていうことを沢山知っていけば、「僕もこう生きたいのかもしれない。」「私もこう生きたいのかもしれない。」っていう、自分の鳥肌だったり、感覚っていうのが教えてくれる。

そんな話をすると、「入り口としてどんな本を読めばいいですか」とよく聞かれるんです。
白駒さんは、そういう質問をされた際、どのようにお答えされているのですか?

よく私が引用するのは松下幸之助さんのエピソードなんです。

松下幸之助さんがまだご存命の頃、「人を育てる時に真っ先にすべきことは何ですか?」と訊かれたことがあったそうです。そのとき松下幸之助さんが、一瞬のためらいもなく、こうお答えになったといいます。

「相手が子供であったとしても、大人であったとしても、最初にやるべきことは、伝記を読ませることだ」

それこそ、今、喜多川さんがおっしゃったことと一緒で、知らなかったら、「夢」も「志」も持てないよ、ということだと思うんですよね。

色々な人の生き方を知ることが、まずは大事だと。

あとは、高校生の頃、本当に私は「万葉集」とか「枕草子」とか「奥の細道」とか、通学電車の中で毎日古典文学を読んでいたんですね。そういうのを読みながら、

「自分の中にこういう感性が備わっているんだな」

って思ったら、ものすごくエネルギーが湧いてきたんですよね。

やっぱり何十年、何百年も読み継がれてきたものというのは、自分が生きていく上での根っこを作ってくれるな~って思います。

それから、私が歴史を伝える時に意識していることがあります。

出来事自体は、時代が違いますから、今と同じ事が起きているわけじゃないんですけど、でもその出来事を起ことした原動力は「人」ですよね。

その「人」に宿っている力というのは、その人だけに特別宿っていたものって、私はあんまり大きくはないんじゃないかなと思っていて。それよりも、その民族が持っている歴史とか、文化に根ざした共通分母のような形で、育まれてきたものが大部分だと思うんですよ。

…ということは、「こんな素晴らしいことを成し遂げた、この人の能力やこういうエネルギーが、あなたにも宿っているんですよ!!」ということです。そこを私は子供達に特に意識して伝えるんですよ。

なるほど。

そうすると、歴史が人ごとじゃなくなってくるでしょ? 自分の物語になってくるから。

子供達の目の輝きが違ってきますよね~。

なるほど、そういう風に伝えてらっしゃるんですね。

そうです。

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