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Interview13 武藤杜夫さん

2020/01/08

そこに行く手前の子供って言ったら変ですけれども、もう一歩踏み外したら少年院に行かなければならないという状況の子たちは、今いる環境で何かしらのサインを出しているんでしょうけれども、そこで踏みとどまるために…周りはどうしてあげるべきですか?

一人ぼっちにしないことです。その子を孤立させない。
特に、大人がです。
きちっと、日の当たる社会とパイプを持っている大人たちがこの子たちを一人ぼっちにさせないことだと思います。

一言で言うと、子供達の一番根深いところの問題は「孤独感」なんですよ。だからひとりぼっちを作らないことなんです。
僕が今やっている活動も一人ぼっちの子供を作らない活動です。

母親が話しかけようとすると、ものすごく反発的になってしまったり、暴力的になってしまったりする子に対しても同じですね。
親や先生たちは、思春期の難しい年頃の子どたちにとっては、うっとおしい存在なんですね。
よくご存知だと思いますが、彼らの中では自立が始まる、その時期には、自分を抑圧しようとする人、子供扱いするような人は全部敵じゃないですか。

僕それは、正常な反応だと思うんですよ。

そうじゃなきゃ困ると言うか、反抗期が来ない子は、逆に困ると思ってて。
でも、そうなったときに孤立しちゃう子が多いんですね。…大人との接点、大人社会との接点がなくなる。
結果として、どんどん自分で問題を抱え込んだり、悩みを抱え込んだり、葛藤を抱え込んだりしたときに、問題行動となって爆発的に外に出てきてしまうということがよくあるんです。

そうならないためには、学校がこれをやりなさいとか、親がこうしなさいとかではなくて、本人とは関係ない大人が、どれだけ本人とつながるかっていうことも大切なことだと思います。でも、繋がりたがらないじゃないですか?

子供がですか。

子供もそうですが、どちらかと言うと大人たちがです。
昔だったら、地域の大人がほっとかないと言うか、今は、そういう地域の子供に声をかけるだけでもリスクがありますよね?(笑)不審者扱いされたりするし…

だから、僕が今やっていることは、新しいことをやってるんじゃなくて。昔は当たり前に日本人がやっていたことを、もう一回大人がやるべきじゃないでしょうかと言う、そういう提案なんだと思います。

今の武藤さんの活動のお話が出て来ましたので、そこをもう少し説明してもらえますか?どんな活動をされているんですか?

今は自分の団体で、とにかく沖縄中の生きづらさを抱える子供を探すところから始めています。
相談を待って動くのではなく、困っている子がいないか?とか、一人ぼっちの子がいないか?とか、探すことから始めるんですよ。

よく、相談の事業って、代表的なものは「センター型」と言われる支援がありますが、相談センターみたいなところで事務所を構えて、そこで電話や来所をする子たちを待つというスタイルが主流なんです。

最近はもう少し積極的な支援もあって「アウトリーチ」という、文字通り「手を差し伸べる」っていう意味ですけど、例えば、何らかの事情でお家から出られない、子供が引きこもっている、外には出れないからうちに来てくれないか?っていう相談があったり、本人からも来てほしいって相談があると、訪問して支援するのが「アウトリーチ型」っていう支援ですが、僕がやっているのは、そのどちらとも違う。

呼ばれてないのに、行くんですよね(笑)。

街を歩いて、一人の子がいないか探して、声かける。最初はそうでした。ところが、僕がそうやって手を差し伸べた子どもたちが、僕のことを別の子に紹介して、こういうご時世ですからSNSで広がって、そうやって僕につながってくるケースも増えて来ました。

だから、僕は、自分の形を「ディスカヴァー型」って呼んでいます。
つまり、「探索」ですね。

すごく積極的ですね!

完全に不審者ですよね!(笑)
片っ端から、声をかけることから始まった活動が、今、2年経って千人を超える全国の子たちと関わることになって。

え?全国でやっているんですか?

全国から講演会に呼ばれるので、そのときにLINEのQRコードとかバラまくんですよ。「何かあったら、いつでも連絡くれ」って。そうやっているうちにあっという間に全国からの相談に広がっちゃいました。

その活動をお一人でやられているんですか?それとも同じようにやってくれる人がいるんですか?

はい、講演会をやる時には、僕の教え子の少年院の卒業生と一緒に動いたり。
あとは、子供たちの支援活動をやるときは、ボランティアスタッフの子たちがちょこちょこいて、彼らが手伝ってくれたり。

もちろん、僕一人でもできるんです。できる範囲でやればいいだけだから。
できるんですけど、いつの間にか大きくなっていったような感じですね。

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