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Interview13 武藤杜夫さん

2020/01/08

ところで、やっているうちに、本当に家に帰れない子がいるって分かったんですよ。

「家、帰りなさい」って警察が帰しても、先ほど話したように、そこが問題を生んだ場所ですから結局問題が悪化する。
具体的に言うと、深刻な虐待のケースが多いですね。街に出てみるとそういうケースがすごく多いんですよ。

こういう子たちに「帰れ、帰れ!」と言っても悪化するんですよ。もちろん子どもたちも、どうしても帰らない…

「児童相談所行く?」って聞くと、「児童相談所は絶対行かないって、行くくらいだったら野宿する。」っていう子たちを、「じゃあ、この辺、酔っ払い多いから、朝まで頑張って気をつけて野宿しなよ。」とは言えないじゃないですか。

そういう子たちを緊急避難的に、うちの事務所に連れて帰ってくるようになりました。連れて帰って面倒見るようになって、それが段々、段々大きくなって、もう、うちの事務所だけでは収集つかなくなっちゃって、今、もう一部屋マンションを借りて、そこで子供達に生活させながら、自立に向けた訓練をしているんです。

子どもたちはどうして児童相談所に行きたがらないんですか?

実はそう言う子は、すでに行ったことがある子なんですよ。
「小学校時代から行ったよ」とか「3、4回行った」っていう子がほとんどなんです。

児童相談所に行ったら、まずスマホを取られて、タバコとられて、で、24時間軟禁されて、外に出してもらえない…で、「じゃあ、頑張って耐える」ってなって、2ヶ月くらい耐えたと思ったら、そしたら、

親と家庭に復帰させるために、話し合いをさせるって言われて、
そりゃぁお母さんだって、そういうところに呼ばれれば「私はもう手出しません。改めます。」って言いますよね。

でも、家に帰った瞬間、結局元に戻って虐待される…で、また、うちを追い出されて…そんなことを繰り返すばかりで何も解決しないからって、だから、野宿したほうがマシって。そう言う子がほとんどなんです。

もちろん全部じゃないですよ、児童相談所で解決する子もいます。でもやっぱり、あぶれてくるケースの子が僕のところに来るので…その子たちは行かないってなります。

そういうことなんですね

僕の団体は公的な機関じゃないんです。
税金を一円も使わないんですよ。もちろん「使え」って言われます。国からも自治体からも「使ってください」って言われます。だけど、税金使うと、「あれをやれ!」とか、「これは、やるな!」とか制約がかかってきます。

僕みたいに夜中活動して、子どもたちに声をかけて、どうしようもなければ保護してってなると、やはり問題が起こることだってあるわけです。ヤクザと小競り合いになることもあるし、そういう活動に行政を巻き込んだら迷惑をかけるんですよね。だから、あくまでも一個人として、小回りの利く活動をしたいと思ってて。

そういったこともあって今は僕の講演会の講演料とか、あとは、皆さんや企業さんからいただく募金とかだけで活動しています。

こういう話をすると、「武藤さん、じゃあ、事業モデルはどう言う風に考えているんですか?」とかって言われるんですけど…(笑)事業モデルなんてあるわけないです。

僕がしている活動を皆さんにお伝えして、皆さんからご理解をいただいて、そこから応援してもらえればそれでいい。
じゃあ、「どうやって団体を大きくしていくんですか?」とも聞かれますが、大きくする気がまずないんです。

「じゃあ、何を目指しているんですか?」って必ず聞かれる。

僕の目標って別に、組織を大きくして、収益を上げて、関われる子どもたちを増やそうっていう考えじゃなくて…どっちかって言うと、僕、世の中の大人たちに伝えたいんだと思います。

「大人がどうあるべきか」

子どもたちに対してどう振る舞うかを、僕は実は、子供に手を差し伸べる活動を通して大人に伝えたいんだと思います。
それは別に、これを公共事業にして、そこから何らかの税金をいただいてやっていくっていうことじゃなくて。大人であれば、目の前で困っている子供がいたら、手を差し伸べるべきじゃないかって考えているんです。

責任を取りたがらない大人が増えた…僕はそう思っています。
手を差し伸べた結果、問題が起こったら自分が責任を取らされる。だから、学校の先生も役所の方も余計なことをやりたがらなくなる。そうなるとそれはもはや「子供への教育」ではなく「自らのリスクマネジメント」に変わってしまう。

僕は今、子どもたちに、「そんな大人ばかりじゃない」ってことを伝えたいんだと思います。だから自分の責任だけでできる限りの活動をやっているつもりです。そして、「そういう大人になろうよ」って大人に伝えたいんだと思います。考えて欲しいんだと思います。

子供達が荒れているんだとしたら、荒んでるとしたら、それは大人社会が荒れて、荒んでいるから、そうなったんでしょうからね。

今の活動を通して、一人でも多くの大人に伝えたいというのが、今の武藤さんのやりたいことなんですね。

まぁ。でも、誰にも伝わらなかったとしても僕はやると思うんですよ。だから、伝えるためにやっているかって言われると、違うと思うんですね。

僕は僕のやり方でやるし、誰もついてこなくても、僕はやります。やるんですけど、もし、その結果、大人たちが、一人でも多く、そこについてきてくれたら素晴らしいなって思います。

よく言うじゃないですか、「一人の100歩より、100人の一歩」とかって。僕はこんなの綺麗事だと思っています。むしろ、勇気あるリーダーが100歩踏み出すことなんだと思うんですよ。

リーダーが100歩踏み出すからこそ、周りで見ている人たちが、アイツがあんなに頑張っているんだから、俺らも一歩くらいやってみようかって。恐るおそるだけど、最初の一歩を踏み出すんですよね。これが真実だと思います。
だから、僕、100歩踏み出す大人になろうと思っています。
周りがやるとか、やらないとかじゃなくて…僕は100歩踏み出す大人であり続けたいなって。

本日は、貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。

ちょっと、僕ばかりしゃべり過ぎましたかね(笑)

いえいえ、そういうコーナーですから(笑)。応援しています。

 

 

 

武藤杜夫(むとうもりお)

1977年9月6日、東京都生まれ。中学生時代から非行が始まり、問題行動が深刻化。ボクシングジムに入り浸り、学校をボイコットしていたため、成績は3年間オール1。おちこぼれの烙印を押される。その後は、ヒッチハイクで全国を放浪するなど浮浪児同然の生活を送るが、教育者としての使命に目覚めると、一転、独学による猛勉強を開始。一発合格で法務省に採用される。2009年には、沖縄少年院の法務教官に着任。逆境から獲得した人間力で多くの非行少年を感化し、更生に導くなど、短期間でめざましい実績を上げる。マスコミの注目を集め、スーパー公務員として将来を嘱望されるが、2017年、幹部への昇任を固辞して突然辞職。同時に、教え子である少年院の卒業生らと「日本こどもみらい支援機構」を設立し、代表に就任する。現在は、沖縄全島を舞台に、非行を始め、不登校、ニート、ひきこもりなど様々な問題を抱える青少年と現場最前線で交流しているほか、講演活動、執筆活動などにも精力的に取り組んでおり、その活躍の場は全国へと広がっている。 

「日本こどもみらい支援機構」

「武藤杜夫さん Facebook」

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