母さんのコロッケ
2011/09/09
【発行日】201/9/9
【出版社】大和書房
【内容】
脱サラして塾を立ち上げた主人公・秀平。自分の仕事に疑問を抱いていた彼は、子供たちに「挑戦する勇気」を与える塾を作ろうとしていた。だが、思うように生徒は集まらず焦りと不安を感じる日々が続く。そんなある日、たまたま買ったのど飴「ルーツキャンディ」をなめてみると…。子供のときは気づかなかった、親の愛の大きさ―。ベストセラー作家が贈る究極の家族小説。
【Officeはげっち淨德和正さんによる推薦文】
僕たちは先人からの命のバトンをあずかっています。
両親、祖父母、高祖父母までを数えるただけで14人。
4代前にさかのぼると30人。そのなかのひとりでも
命が絶えてしまっていたら、僕らはこの世に存在していないことに
なりますから、それだけでも奇跡なことなのです。
医師の日野原重明(2017年7月没)さんが生前
「いのち」についてこのように語られていました。
命は体の中のどこにあるのかと聞かれると、
みんななかなか答えられない。
命とは一人一人のもっている時間であり
自分でつかえる時間が命なのだと。
その命を自分のためにだけではなく、人のために使うことが
本当に命を使うことになるのだと。
『母さんのコロッケ』は主人公の秀平が脱サラをして
子どもたちに「挑戦する勇気」を与える塾を作ろうとしますが
なかなか思うように生徒も集まらず焦りはじめたとき
たまたま入ったコンビニに和服の女性の店員がいて、
そこで買ったのど飴が「ルーツキャンディ」だった。
〈本文より〉
自分が知るはずのない過去の出来事を知る。
はじめ、それは秀平にとって耐え難い苦痛だった。
祖父母の時代は、家族に起こる出来事が過酷すぎる。
きっとそれは秀平の家に限った話ではないのだろう。
本当に日々生きることが命がけの時代だったのだ。
今の自分がその時代に生き、同じことを経験していたら・・・と
考えると、とても彼らのように強く生きられたとは思えない。
しかし、彼らはその過酷な運命を受け入れ、
自分にできることを全力でやって命をつないでくれた。
だからこそ、今、自分がここにいるのだ。
秀平は目を背けてはいけないと感じるようになった。
「俺も、すべて受け入れよう」
「母さんのコロッケ」より 115ページ