初漕ぎ
2022/01/11
今年の初漕ぎは
岸にまだ雪が残る寒さの中でした。
川岸を散歩する人は
「この寒い中、どうしてあんなことをするんだろう」
といいたそうな顔でこちらを見ていく。
その気持ちはわかる。
もし自分がカヤックをしない人なら
真冬の寒空の下、波に向かって行ったり
わざとひっくり返ったり、起き上がったりと
バシャバシャやっている人を見たら
気が狂ってると思うだろう。
ところがやってみると
冬が一番、やってて気持ちいことがわかる。
まず冬の関東地方は比較的天気が安定しているから、自分の予定が空いている日が晴れていることが多い。
それから、水が澄んでいて綺麗。
雨量も少ないので、川の水量が安定しているのもいい。
基本的な動きを練習したりするのに最適。
そして、何より、人が少ない。
これが暖かい季節だと、カヤックをする人も相当増えるが
他にも、オープンデッキカヌーで川を下る人、SUPの人、ラフティングを楽しむ人、釣り人と人が多くなる。
そして、みんな同じ岩の後ろの波やエディ(川の流れが止まっている窪地)を狙って楽しんでいる。
だから、自分のお気に入りのスポットがいつも空いているとは限らない。大抵先客がいる。
その点、冬はいい。休日でもほとんど人はいない。
唯一の難点だと思われがちな「寒さ・冷たさ」もやってみると
実はそうでもない。
というのも、水に触れるのは、手首から先と顔だけで他は濡れない。
だから見た目ほど寒くない。
むしろ、サウナスーツを着たまま全身運動をし続けているような感覚なので
定期的に、わざとひっくり返って顔を冷水に浸さなければ暑くて仕方がない。
とはいえ、実はカヤックを趣味とする人でも冬はやらない人は多い。
実は、ロール(ひっくり返ったカヤックを起こす技)ができなければ、すぐに全身ずぶ濡れになって続けられないからだ。
初めてカヤックを買った年、冬が来る前にロールが上がるようにならなければと
必死で練習したのを覚えている。
つまり、「ロールが絶対に上がる」という条件をクリアした人にとっては
冬の川はパラダイスのような場所だ。
冬の川にはその条件をクリアした人たちだけが集まって、川を満喫している。
あちら側から見たこちらは
苦行のような世界。
でも、こちら側にいる人は
これほど面白い世界はないと思っている。
そういうことはよくある。
ただそのためには、「ロール」のように
自らの鍛錬で乗り越えなければならない条件というものがあるのも事実。
乗り越えた壁が多ければ多いほど
普通の人は体感できない「愉しさ」を経験できるのだ。