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おいべっさんと不思議な母子

2013/01/09

 

【発行日】2013/1/9

【出版社】サンマーク出版

 

【内容】

「おいべっさんに幽霊が出たみたいだぞ」。
小学生たちの間でそんな噂話が広がっていた新学期の初日、6年3組を担任することになった日高博史のクラスに転校生がやってくる。
石場寅之助……色あせたTシャツに袴のようなチノパン姿。
伸びきった長い髪を後ろに束ねた出で立ちと独特の話し方は、クラス中の視線を集めただけでなく、いじめっ子たちとの争いも招いてしまう。
いっぽう、反抗期をむかえた博史の娘、中学校3年生の七海は、友だちと一緒に起こした交通事故から仲間はずれにされてしまった。
そのあと七海がとった行動は?
寅之助はどうやってクラスに馴染んでいくのか?
クラスのいじめっ子黒岩史郎の母親・恵子が流した涙の理由は?
さまざまな人間模様が交差しながら展開していく。
そして雷が鳴る夜、おいべっさんで起こったこととは!

 

 

 

Officeはげっち淨德和正さんによる推薦文】

子供の才能にふたをする方法があるのをご存知でしょうか。ふたをするには「おれはだめだ」という気持ちしっかり植えつければいい。どこで植えつけるかというと家庭では親が、学校では先生が「ダメだ、ダメだ」とレッテルを貼ればよい、と作家の椋鳩十さんが書かれている。
奇跡の連続で誕生した命なのだから、その可能性も無限大なのだ。
『おいべっさんと不思議な母子』の物語には、子供の才能のふたを開ける方法が隠されている。6年3組の日高博史先生のクラスに色褪せたTシャツに袴のようなチノパン。伸びきった長い髪を束ねた名を石場寅之助くんが転校してくる。自己紹介の挨拶が「俺は、石場寅之助と申す。新参者にて、わからぬことも多くあるが、以後、よろしゅうお頼み申す」と。寅之助の母・妙さんも凜とした女性で「身体に傷ひとつないきれいな男など、傷つくことを恐れて肝心なときに逃げてきたという証を、見せつけて歩いているようなものでございますから」と言い切る。この母子の周りの人たちに大きな変化がおとずれるんだ。

〈本文より〉
学校は、上手にたくさん失敗をするための場所なのだ。そして、その失敗からどう立ち上がるのか、失敗をどう克服するかを学ぶ場所なのだ。決して、一つの失敗もしないで、転ばないで六年間の学習内容を修得するのが目的ではない。もちろん人間関係のぶつかり合いだってそうだ。誰とも一度もぶつからないのが、子どもにとっていい過ごし方ではない。そこに「学び」なんてあるのか。自分のやってきた教育が、単なる責任逃れのような気がしてきた。
博史は妙と出会ったことで、教師としての熱い血が煮えたぎるのを感じた。
「俺はこんなことをやっていたんじゃダメだ。こんな先生になるために、先生になったんじゃない!」

 『おいべっさんと不思議な母子』より 134ページ