Now loading...

ちゃんとやる

2022/02/03

今日は「節分」です。

数年前「喜多川さん豆まきとかするんですか?」
と聞かれたとき、「一応、形だけ」と答えたら、
その人が、「うちはそういった行事は、家族のみんなでちゃんとやります」
おっしゃっていたので「ちゃんとやる」を僕なりに考えてみようと思います。

二十四節気の季「節」の変わり目
「立春」「立夏」「立秋」「立冬」の前の日を「季節を分ける日」と考え「節分」
と言い、この日に邪気が入りやすいと考えられていたので、厄祓いをする風習が生まれました。
今でも、「季節の変わり目には体調管理に注意」と言いますね。

その中でも、立春の前の日の節分だけが風習として今に残っています。
ちゃんとやるなら、立春の前日だけではないということになります。

さて、節分といえば「鬼」です。
鬼のイメージは昔から角(つの)に虎柄のパンツ。
鬼は北東の方角からやってくると考えられ、その方角を「鬼門」と呼びました。
名前を聞くだけで、たくさん鬼が出てきそう。
日本では古くから方角や時間を12分割して干支を当てはめて呼ぶ習慣がありました。
北東は「丑(うし)」と「寅(とら)」の間、「丑寅」の方角に当たります。
その方角からやってくるからには、牛のようなツノが生えていて、大事なところを隠すパンツは
虎柄でしょう。となったと言われています。
というわけで、ちゃんとやるなら、ツノの生えたお面だけでなく、虎のパンツも用意することに。
ちなみに、丑寅の逆の方角、南西は「未申(ひつじさる)」で裏鬼門と呼ばれています。
例の物語で申、酉、戌が鬼退治に同行したのは丑寅の反対の方角にあたる動物だからという説も。
だからちゃんとやるなら、ペットに犬や鳥がいたら参加させるべきでしょうね。
でもやはり酉や戌は裏鬼門からは少しズレるので、ちゃんとやるためには猿を飼っておくと最強でしょうかね。

さて、泣く子も黙る金棒を振り回す鬼を退治するために
我々が手にするアイテム(武器)はと言えば…

そう「豆」。

金棒で簡単に打ち返されそうなものですが、他の何を投げられても平気な鬼が
豆だけは苦手らしい。なぜ豆か。

鬼を蹴散らす方法は日本では「古事記」に由来すると言われています。
話せば長い国産みの物語があって結果として
伊邪那美命(イザナミノミコト)が黄泉の国に行ってしまう。
それを追った伊邪那岐命(イザナギノミコト)が会いたいというが
もう黄泉の国の食べ物を食べてしまったので帰れないという。
そこから少しやりとりがあって
「開けないでください」と言われた扉を伊邪那岐命が開けてしまうんですね。
そうするとそこには…(気になる人は調べて)

「見〜た〜な〜」

となって伊邪那岐命は黄泉の国から戻ってくる黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)を
必死で走って逃げてくる。
後ろからは1500もの邪鬼たちが追いかけてくる。
伊邪那岐神は手にするものを投げて追い払おうとするが全く効果がない。
ところが坂の終わりになっていた桃の実を三つ投げつけたところ
1500もいた鬼が一斉にいなくなった。
そこで伊邪那岐命は黄泉比良坂を岩で塞ぐことができた。
塞いだ後、岩の向こうにやってきた伊邪那美命は
「毎日1000人ずつ命を奪ってやる」と宣言するんですね。
ところが、伊邪那岐命は「じゃあ、毎日1500人ずつ新しい人を生むから」って対抗する。
これによって人間に寿命が生まれたことになっている。
神話の出来事なので「そんなばかな」と今の人は思うかもしれないが
実はこの物語が日本史に与えた影響はとても大きいと僕は思っている。
この国の神様は、黄泉の国に行った人の祟り(タタリ)を止める力がないことになっているんですね。
伊邪那岐命は
「そんな祟り私の力でねじ伏せて見せようぞ。私は全知全能の神だ」とは言わなかった。
神よりも死者の祟りの方が強い。
神は万能ではない。岩を超えて移動することはできないし、誰かの祟りを止めることもできない。
その文化が日本史を大きく動かしていくことになります。
「どうやら、海外では仏教というのがあるらしいけど、その力ならなんとかなるかなぁ」
といった方向に向かうということですね。

話がそれました。
というわけで、ちゃんとやるなら、桃を投げましょう。
桃には邪気を払う力があると考えられていた。ほら、ひな壇にも桃の花がある。
でも流石にこの季節に桃は入手が困難であるだけでなく、年の数食べるのも三〜四歳くらいから無理になる。(いや、一〜二歳も無理か)
何より、イベント後の掃除が。
そこで豆をとなる。
「古事記の物語を知っている人は、豆にはそんな力がないんじゃないの?」
って思うはずなんだけど、
実は節分で使われる豆は、神社で神事が執り行われ祝詞(のりと)が挙げられている。
祝詞の文言はわかりませんが、内容は、

「黄泉比良坂で鬼を退散させた、桃の力をこの豆にのり移させたまえ〜」

といった内容。桃の力が乗り移った豆だから、桃ではなく豆でも鬼が退散する。
ちゃんとやるからには、鬼役の人は

「こんな豆など、痛くも痒くも…ん?なんだこの感じは!貴様、これはただの豆ではないな!
 桃の力を纏っておるではないか!」
くらいのひと芝居はほしい。

そんな話を聞くと、スーパーで買った豆では鬼は逃げない気がしてくる。
ちゃんとやるなら、神社で祝詞をあげてもらった豆を使って豆まきをしましょう。

さて、ここまで準備をしたところで、一体鬼っていつ来るの?

もうお分かりでしょう。干支は時間にも当てはめられると言いました。
昔は一日を12等分して十二支を当てていました。
七番目が午(ウマ)ですから、今でも、それより前を午前、それより後を午後と言いますよね。
まあ、鬼が昼間っから大挙してくるとは思わないでしょう。
では、いつ?
そうです。もちろん丑寅の刻限ということになるでしょう。
二十四時間を12等分していますから、一つの干支に当てられる時間は約2時間。
丑の刻は夜中の1時〜3時となります。(子の刻は午前0時を中心として前後一時間ずつ)
それぞれの刻を4分割して約30分ずつの目安としていました。
だから、よく言われる「丑三つ時」は午前2:30ごろということになります。
鬼が来るのはこの辺りから午前3:30ごろまでが一番可能性が高そうです。
というわけでちゃんとやるなら、家族総出で(ペットの猿も含めて)結構夜中まで起きてないといけなそうですね。

というわけで
どこまでちゃんとやるかは人それぞれですが
ちゃんとやりたい人は参考にしてください。

(※ すべて内容は諸説あります)