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こっちに変わる瞬間

2022/02/07

朝起きると
いつにも増して気温が低く、どんよりと低い雲が垂れ込めている。
「行くのか?」
と一瞬、自分に問うが、
準備を始めたときにはもう迷いはない。
ただでさえ布団から出るのが辛い朝に
道具を車に積み込んでいく。

いつものスポットまで
車でおよそ90分。

駐車場について、川を見下ろすと
今のところ来ている人は誰もいない。
誰もいない川にこれから向かう。

寒空の下で着替え
着込むものが肌に触れるたびに
最初は恐ろしく冷たい。

カヤックを担いで川まで降りる。

コクピットに乗り込み
いざ川へ。

手袋をするとパドルが滑るのでしない。
凍るように冷たい水に手が浸かる。痛いが、すぐに慣れるのを知っている。

基礎的な動作の確認やウォーミングアップを終えると
一度わざとカヤックを転覆させて、ロールで起き上がる。
身体全体が一気に冷えるのがわかる。

ここでようやく心のスイッチが
「やっぱり、来てよかった」に変わる。

ここまでは、「ワクワク」だけでなく
「もっと寒くなる」が先に待っている状態だが、一度水に浸かってしまえば
あとはそれ以上寒くなることはない。むしろ動くほど身体は温まっていく。

「あちら側がこちら側に変わる瞬間」

と僕は表現している。

これは何度経験しても本当にいいもんだ。