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株式会社タイムカプセル社

2015/11/19

 

【発行日】2015/11/19

【出版社】Discover 21

 

【内容】

人生は、いつでも、何度でも、どこからでも、やり直せる。
人は日々の生活の中で、自分が抱いていた夢や希望をいつの間にか忘れてしまう。
5人の登場人物は、十年前の自分が未来の自分に宛てて書いた手紙を読むことを通して、
自分が素直な気持ちで実現したかった夢、抱いていた希望に気づく。
そして自分自身からのメッセージに背中を押され、前に進み始める。

その手紙を届ける主人公自身もまた、5人の人生に触れていく中で、自分の本音に気づき、新たな人生の一歩を踏み出す。

感動のストーリーとともに人生の再出発への勇気を贈る喜多川泰、デビュー10年目の最高傑作。

 

 

 

Officeはげっち淨德和正さんによる推薦文】

この株式会社タイムカプセル社の仕事がちょっと変わってる。
何年後かの自分に向けた手紙をクラス全員で書いた。
何年後かに手紙を発送するけれども
何人かは宛先不明で返ってくる。
さらに調査して送ってもまた返ってきたときは
受取人の調査をして、直接手渡して届けるのがこの会社の仕事。
届ける相手が海外にいる場合もある。
十年、二十年後のことなので受け取れなかった人たちには
それぞれにそれなりの理由がある。
でも、過去の自分が書いた自分への手紙を受け取り
読みはじめたとき、心が書いた当時へタイムスリップする。
何らかの理由で凍りついて封印していた気持ちが
少しずつゆっくりと氷解してゆく。
手紙を受け取った人たちは
それぞれに再生の道へと歩みはじめる。
どんなにどん底にあっても
僕らにはセカンドチャンスがある。
あきらめずに立ち上がればいいのだ。
『株式会社タイムカプセル社』は人間の再生の物語なのだ。

〈本文より〉
読み終わる頃には、涙が止まらなくなった。
明日香は、やっとのことで嗚咽をこらえて立ち上がり、
化粧室に駆け込んだ。
トイレに入ると、鍵をかけて、もう一度手紙を読み返した。
読み進めるうちに、中学時代にあったことが次々に思い出された。
この十年間、思い出すことすらなかった数々の出来事が
鮮明に甦ってきた。
子どもっぽさを残す自分の筆跡が、今の自分に精一杯エールを
送っているようで、この手紙を書いた頃の自分を強く
抱きしめてあげたくなる。
明日香は、溢れる涙を拭くことも忘れて、手紙を読み返し
小さな声で、「ごめんね、ごめんね」とつぶやき続けた。
もっともっと大切にしてあげなければならなかった。
自分の純粋の夢を。
将来への希望を。
未来への期待を。
すべて裏切ってきた自分が情けなくて、悔しくて、
子どもの頃の自分に申し訳なくて、ただただ、
謝りながら泣き続けた。

 『株式会社タイムカプセル社』より 72ページ