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時刻通りは当たり前?

2021/06/10

山手線や新幹線をはじめとする日本の鉄道網は
時間に正確であることで世界中に知られている。
海外の方ならずとも、その正確さに驚かされる。

先日も乗った電車が踏切の停止信号を感知して遅れた。
車内で「お急ぎのところ、電車の到着が遅れましたことお詫び申し上げます」
というアナウンスが流れたが、遅れはたった2分だった。

今では日本を訪れる世界中の人が、日本人の時間を守る意識の高さに驚かされ
それは世界で有名になっているが、開国したばかりの日本に来た外国人たちは
それとは真逆の感想を日本人に対して持っていた。

つまり誰も時計に縛られず、時間を守ろうという意識がない国民だったということだ。
それどころか生活が時刻に縛られていない。

日の出ている時間を6等分して「一刻」を決めていたのだから無理もない。
夏と冬ではその長さも異なる。それを正確に測る術もない。結果として
「だいたいこのくらい」という文化になるのも頷ける。
「辰の刻に参ります」と言われても、辰の刻がいつなのかはそれぞれの感覚に委ねられる。

近江神宮は「百人一首かるた」の聖地として有名になった。
もちろんそれは祀られている天智天皇が一首目の歌

「秋の田の かりほの庵の苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ」

を読んだことに因んで、かるた大会が開かれるようになったことによる。
天智天皇は即位する前は中大兄皇子。「大化の改新」を起こした人としても有名だ。
日本史の中でも皇子時代の名前と天皇としての名前を覚えなければならない稀な存在。
他にも様々な功績を残した。

近江神宮を訪れると、「近江神宮時計宝飾眼鏡専門学校」が併設されていることがわかる。
境内には日時計、古代火時計、水時計と時計に関するものも多い。
天智天皇10年4月25日
水時計が設置されたことが「日本書紀」に記されている。これが日本初の時計とされているからだ。

世界一時間にルーズな国を、時間を守る国にするために
大正時代に考えられたのが「時の記念日」の制定らしい。
結果として世界一時間を守る国になった。変わるとなったら一気に反対に振り切れるところが日本らしい。

旧暦の4月25日は、6月10日。

自分が水時計を作った日が、1400年後の日本の国民性を左右することになるとは
天智天皇も想像されなかったに違いない。

個人的にはもう少しルーズでもいいような気もするが(笑)。
少なくとも、時刻通りが当たり前ではなく
不断の努力の賜物であると忘れないでいたい。