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一流の中学生

2018/06/07

作家という職業柄
様々なメディアから取材を受けることがあります。

有名な雑誌や、大手の新聞社などもありましたが
以前、無料で配布しているタウン誌の取材を受けたことがありました。

「地域に本を書かれている方が住んでいると教えていただいたので
そういう人を地域に紹介したい。是非取材を受けてもらいたい」

ということで日程を合わせて90分の約束で取材を受けました。

約三週間後
現れた記者さんは、あいさつを済ませると
早速取材に…
カバンの中から僕の作品を取りだしてテーブルの上に置くと

「それでは、早速ですがお話をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

と切り出しました。
「どうぞ」
と僕。

すると第一声が
「喜多川さんは、どういう作品を書かれているんですか?」
でした。

「ん?」

と思いつつも、自分なりに丁寧にお答えしたのですが、次の質問が
目の前の本を指さして
「この作品は、どういった内容なんですか?」
でした。

実は、取材をしに来た記者さんの中で僕の本を読まずにいらっしゃった方が
初めてだったので、つい
「まだ読まれてないんですか?」
と聞いてしましました。
その方は、慌ててこの三週間仕事が忙しかったことや、インタビューを受けた後
それを文字に興したりするだけでなく、様々なことをやらなければならないことを
説明することにかなりの時間を費やして、結局取材というよりも
半分仕事相談、残りの半分は本を読めばわかることで時間が来てしまい
出来上がった記事は取材の意味がなかったんじゃないかと思うほど
ざっくりしたものになっていました。

一方で、取材対象者の本を読んでから会うというのは
記者としてあたりまえだと考えている人もいます。(そちらの方が多いはずですが)
そういう方に取材を受けると、やはり時間いっぱいまで
いろんな話を引き出してもらえるんですよね。

仕事に対する姿勢の違いが
同じ時間でも、引き出せるものを大きく変えるといういい例だと思います。

今日は、名古屋市立平針中学校の講演会でした。
といっても、名古屋に行ったわけではなく、修学旅行先のホテルでの講演です。

生徒たち全員の協力で
素晴らしい雰囲気で話をすることができました。
生徒たちにとっても、僕にとっても生涯忘れることができない
素晴らしい夜となることでしょう。

そんな雰囲気を生んだのは、先生方の事前の指導に他なりません。

講師を呼んで、「話をお願いします」
だけではなく、きっとこの講演会を一つの機会として

「事前に会うことがわかっている人と会うときには、
その人が本を書いている人なら、その人の作品を読んでおく
そういうことができる人になれよ」

ということを生徒たちに教えたかったに違いありません。
先ほどの例でいえば、事前に読んでおくのがあたりまえの大人になって欲しい
という師としての願いがあるわけです。

子どもたちを「一流の人」に育てるために
もの凄く大切な教えですが、その「あたりまえ」を教えるのも
先生の大切な役割です。

事前に作品を読む。その働きかけがきっと徹底されていたのでしょう。
会場に入った瞬間の子どもたちの目が、顔が、そして姿勢が違いました。

試しに、本の中に出てくる内容を話してみると
やはり、「あ」という反応をするんですよね。
先生とアイコンタクトで「この話!」という確認をしている。
作品を読んでいる、または先生と事前にそれについての話をしてあった証拠です。

そんな場を作り上げてくださった先生たち
そして、事前に本を読んで、この時間を、そして僕に会うのを
楽しみにしてくれていた生徒たち
のおかげで僕も素晴らしい時間を過ごせました。

ありがとう。