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数えるのをやめる

2021/05/31

胃が痛いとき以外、人は胃が絶えず働いていることを意識していない。
お腹が痛いとき以外、お腹が働いていることも意識していない。

自分のことだけではない。
子供や親、配偶者が健康なときは、その人の見えない苦悩を意識することもないが
それが目に見えて健康を害す状況を目の当たりにすると、意識の中心に居座って離れなくなる。

我々は手にしていないものを手にすることこそ「幸福」だと思って
「所有」=「夢」だと思って人生を生きるが
そこに意識が向かない状態を「幸福」と呼ぶのかもしれない。

高校卒業前の1年間は
「故郷(ここ)で両親と一緒に住めるのもあと◯日か」
と数えることが何度かあったが
きっと親の方がもっと
「この子と一緒に生活するのもあと◯日か」
と何度も数えたことだろう。
そうやって残りの日数を数えるようになって初めて、それを数えないでいられた日々こそが
幸せな日々だったのだと気づく。

年齢を重ねるにつれて
自らの身体の不調、身内の病気や別れは増えるし、
様々な面で残りを数えることも増える。
そのままにしておくと
歳とともに生きるのが苦しくなる。

そういえば、いろんなことを数えすぎていて
頭がパンクしそうだという人は
意識するのを意識的にやめること
数えるのを意識的にやめること
 
別の言い方をすると
「今、ここ」に集中することこそ
今、磨くべき大切な能力なのではないだろうか。