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逝きし世の面影

2013/08/29

書名:逝きし世の面影
著者:渡辺京二
出版社:平凡社

 

<喜多川の書評>

一人の人間の人生でも、一つの国でも、その人の、そしてその国の歴史を知ることで愛情や大切にしたいという想いは計り知れないほど深まります。大人になり自ら学ぶようになり、日本という国の歴史は学校で先生たちから教わったものとはまったく違った見方があるということを知り、僕はこの国が好きになりました。
この本は幕末から明治にかけて初めて日本という国を見た、西洋人たちが残した資料を基に、初めて日本を訪れる外国人に日本はどう見えたのかが丁寧に書かれています。今や海外旅行は Door to door で飛行機を降りたらそこはすでに目的地が当たり前ですが、当時は日本に来るためには、世界中を船で旅して最後に到着する極東の地、それが日本でした。ところが、世界中を旅してきた旅慣れた西洋人たちに対しても「日本」という国は衝撃と感動を与えるに十分な「特別な国」でした。

「世界中で、両親を敬愛し、老年者を尊敬すること、日本の子どもに如くものはない」
「日本の子どもほど行儀がよくて親切な子どもはいない。また、日本人の母親ほど辛抱強く愛情に富み、子どもにつくす母親はいない」
「私は、日本人など嫌いなヨーロッパ人をたくさん知っている。しかし日本の子どもたちに魅了されない西洋人はいない」
「子どもたちのかわいらしい行儀作法と、元気な遊戯は、日本人の生活の絵のような美しさを大いに増している」

「第十章 子どもの楽園」より

読めば、僕たちが知らなかった日本の原風景がパッと広がり、この国に生まれた誇りと自信を手にすることができるでしょう。そして、本当に大切にしなければならないことは何か…それを考えるきっかけもくれる、そんな一冊です。一家に一冊の必読書だと思います。